第3話 覆う影

 これはある夜の出来事でした。

 眠っていた私は、ゆるりと瞼を開けます。

 眼前にあったのは、黒い影でした。

 170センチをゆうに超えるほどの大きな影に覗き込まれていたのです。

 声を上げることも出来ず、固まっていた私は、ああ、これは夢だと思いました。

 もう一度、もう一度眠ってしまえばなんてことないと。

 なのに瞼は閉じることなく、その真っ黒い影をただしかと見つめることしか出来ませんでした。


 どれほどそうして居たでしょう。

 不意に意識が遠のいていくような、そんな感覚に見舞われました。


 気が付いたら朝でした。

 やはり夢だったのだろうと思い、私はそのことを忘れることにしました。

 奇しくも、祖父が亡くなってから少し経ったあとだったので、もしかしたら私に会いに来てくれたのかも知れません。

 ただ、どうしてだか『アレ』を祖父と思うのは少なからず私には出来ませんでした。

 そんな、少し不思議なおはなし。

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