第3話 あなたはくじらに何を求めているの?

街中を歩いていた。

蝉の鳴き声だけでもうるさいに、溢れるような人の声と混ざって大変なことになっている。

僕の心臓がバクバクなっている。

ふいに横から声。

「大丈夫?」

見るとそこには「くじら」がいた。

「うん。今君は何処にいるの?」

「私は家にいるわ。涼しいから」

「くじら」の口はパクパク動く。

「くじらは、相変わらず君のいいなりだね」

ひざに手をつく。

「いいなりではないわ。くじらが望んでいるの」

汗が地面に落ちて消える。

「くじらに意志がないから、君が良いように操っているだけさ」

耳鳴りがする。

「………し………で……かし……」

彼女の声が、よく聞こえない。

くぐもった彼女の声を聴きながら、僕は地面に吸い込まれるように倒れた。

「大丈夫じゃないじゃない」

くじらは、口をパクパクと動かした。

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