約束の時間

約束の場所へ。



彼女は、ついに来ることはなかった。


何故ならば。



あの朝、突然にやって来た、見知らぬ少年に。



跡形もなく、連れて行かれてしまったから。













『あなたの、せいよ』



すべての意識が繋がったとき、最初に、彼女が発したメッセージだったそれは、時折。



何かの拍子に、不意に、信号のひとつとして流れ込んでくる。



紛れ込むというよりは、明確な意思表示のように思えた。





『あなたのせいなのよ、なにもかも。あなたさえ、来なければ』




約束の時間に、間に合ったのに、と。




受信するたび、責め立てられた。





しかし、うすうすは彼女も、気付いているのかもしれない。



彼が繋がるのは、膨大な情報ネットワーク、のようなものだから。



この星のすべてと、そして。



彼の存在する意味、この星を目指し降り立った使命も、すべてが。




繋がった瞬間に、彼女にも流れ込むのだから。




記録と、記憶と。




それでも。





怒り悲しみ苦しみの、やり場がないのだ。



ぶつけるところがないのだ。



だから。



今は、彼がそのすべてを、受け止めるしかないのだ。





やがて、この星が終わり、融けて。





ひとつになる、そのときまで。




(Code.0809)


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