青春後悔

@hotoharu

第1話


僕、「僕」は『普通』の高校生だ。


僕が普通の高校生になったのは、幼いときからの経験が繋がっている。でも、それを思い出せば思い出すほど僕が『普通』だと感じさせらせてなんだか辛くなってくる。


でも、今日は語ってみよう。


僕が『僕を普通』だと思った経験を…… 。



最初に語るなら「僕」の小学生時代からだろう。


僕の小学生時代は、きっと普通だった。小学生なんて運動が出来れば人気者になってクラスの中心になるなんてどこの小学校でもある事だろう。


そして、僕は運動が出来たんだ。だからクラスの中心にいたが先ほども述べたが、そんなのは何処にでもある事。


つまり「普通」の事だろう。


でも、当時の僕はクラスの中心にいることが「特別」な事だと思っていた。


それが後に僕を苦しめるなんて思ってもいなかったんだ。


その後も小学生時代は、クラスの中心でいつづけた。今さらながら考えれば、この時に何かスポーツでもやってれば良かったんだろう。だけど、"僕は何もやらずに運動ができる"、そこに「特別感」を持っていたから何も行動を起こしたりはしなかったんだ。



そして「僕」の最高の小学生時代に終わりを告げる「卒業」を迎えたんだ。




卒業を迎えた僕はクラスの中心になることが当然だと思いながら「中学生」になった。


だけど、そこで僕は「小学校」と「中学校」との違い、「現実」というものの存在を知る事になったんだ。


僕が小学生時代に運動が出来た原因としては、恵まれた「体格」が影響していたと思う。なにせ、小学生で身長が170センチあったんだ。そんな恵まれた身長に周囲は羨望のまなざしを向けてきていた。


だから、中学校では入学後にすぐに恵まれた身長を活かせるバスケ部に入ることに決めた。


入った当初は、先輩や顧問の先生にもずいぶんと期待をかけてもらった。でも、僕の身体は小学生で急成長した事が原因で、バスケ部での練習を始めてからすぐに怪我の絶えない状態になったんだ。そうして、僕は『僕の意思』とは関係無く部の練習を休むことが増えていったんだ。


そんな中、いつもの如く既に恒例化してしまっていた怪我で部の練習を休んだ時にクラスの友達にカラオケに誘われた事があった。中学生になって全然行くことの出来なかったカラオケとあって、僕は何も考えずに行くよと友達に伝えた。


友達と行ったカラオケは楽しかった。


この時の「僕」は、バスケの練習で自分には恵まれた身長があったから、バスケ部がいたって普通なバスケ部だったから、1年生の「僕」がスタメンに選ばれてしまっていたから、 「僕」は密かに努力した。密かに努力して努力して実力でスタメンになったんだと周りを、先輩を、同級生を納得させるために限界を超えて練習してしまっていたんだ。


だから楽しかった。


今ならわかるが、この時の「僕」はバスケに対してストレスを感じていたんだ。

だから久しぶりにバスケ以外の事をして、バスケ以外の事が楽しくてしょうがなかった。


そして、僕は『怪我』を理由に2週間バスケ部に行かずに、友達と遊ぶ事にした。


その2週間は楽しかった。今まで中学生になって出来なかった遊び、さらに友達も増して、小学校の頃からの友達とも遊べたんだ。


楽しかった。 ただただ楽しかった。


2週間が過ぎてバスケ部に行く事にした。


先輩達に挨拶したが、無視された。


同級生に挨拶したら、無視された。


この時の「僕」は何もわかっていなかった。中学生という成長期の子供は2週間あれば、どれほど身長が伸びるのかを………、弱いながらに一生懸命になって練習する部員達の思いを…… 、わかっていなかったんだ。


当時の「僕」は、無視された理由なんてわからず、そっちがそんな態度ならこっちから辞めてやる、そんなあっさりとした事で「僕」は部を辞めた。此れには、僕が小学生時代にスポーツなんて何もしなかったのも理由だったのかもしれない。


結局の部を辞めた理由なんて当時の「僕」が子供だったという他はないんだろうと今なら思える。


そこから「僕」の勘違い人生は終わりを迎える事になったんだ。


バスケ部で無視された理由、これが全てだった。「僕」が休んだ2週間に先輩の数人が僕と同じくらいまで身長が伸びていたんだ。そうなれば、当然の如く技術の無いくせに偉そうにしていた「僕」はチームに必要の無いお荷物だった。

「僕」だって練習は人並み以上にしていた。だけど、小学校で作り上げてしまったプライドが誰かに努力している姿を拒み、結果として誰かが「僕」を庇ってくれる事はなかった。


そして、部を辞めてから友達と遊ぶ事が増えた「僕」だったが、同じバスケ部だった奴からの「僕」の部内での態度などの噂話を聞いて、徐々に遊ぶ回数は減っていったんだ。


此れが「僕」が自分は『特別』だと思っていたのが間違いだと気づいた事件。


「僕」の勘違いが終わった事件。


「僕」が『普通』の人間だと気づいた事件。


でも、「僕」はまだ死んでなんていないから話はここで終わりを迎えない。

「僕」の話には、ちゃんと続きがある。


「僕」が『普通』だと気づいてからとった行動は、『勉強』だった。


此れは『逃げ』だった。


当時の「僕」ですら友達が減っているという『現実』から『逃げる』ために勉強を始めたのには気づいていた……気づいていながら、そんな行動しか出来なかったんだ。


でも、この時に勉強したから高校受験を迎えた時には、県内有数の進学校に合格する事が出来たんだと思う。


県内有数の進学校に合格した時、「僕」には数少ないが「友達」からの祝いの言葉があったんだ。


どうだ、『普通』だろう。


敢えて言うなら高校生になる前に「友達」の大切さを知っていた事だろう。


そして、高校生になってからは中学の頃の部活の経験から「部活」を選ぶ事はしなかった。


この時は、再び誰かに期待されて、その期待に応えられなかった時の事が、その後の事が怖かったんだ。


そんな『普通』な僕にも高校2年生の頃にある出来事があった。出来事事態は、高校生ぐらいの歳頃なら『普通』な事だった。


当時、僕は勉強しかしていなかった。友達作りだって中学生の頃の「僕」から離れていった奴らの事を思い出しては、消極的になっていたから誰かを魅了する事なんて何も無いはずだった。


しかし、そんな「僕」を好きだと言ってくれる人がいた。


高校生が盛り上がるイベント『告白』だ。


そんな彼女は、「僕」とは対称的で活発な人だった。

彼女は、『吹奏楽部』に所属していた。正直な話で言えば、彼女は当時の「僕」の好みとは違った。だけど、彼女が『部活動生』という事や勉強しかしていない「僕」を選んでくれた事が嬉しくて、名前も知らない彼女との付き合いが始まった。


彼女は、いつも笑顔の絶えないで、彼女の周りを元気にしてしまうような、そんな少女だった。

デートだってした。そんな時にも彼女は、笑顔だった。何がそんなに可笑しいのか、彼女は本当に笑顔だった。


そんな彼女が泣いている姿を一度だけ見た事がある。


それは、僕が高校3年生の日が燦々と照らす暑い夏の事だった。


彼女は吹奏楽部。つまり、野球部の応援に行く事になっていた。


僕の高校は、県内有数の進学校だったが同時にスポーツにも力をいれた文武両道を目指す学校だった。

だから、野球部には推薦で入ってくる奴もいて、そこそこ強かった。そして、僕が高校3年の夏、野球部は県大会への出場を決めたんだ。此れは、僕の高校では数年ぶりの快挙だと初の全校応援が決まった。


そして野球部の試合の当日、相手はプロ注目の選手がエースの学校で圧倒的に、ただただ圧倒的に試合が進んでいった。


みんなが応援した。これ以上は声が出ないってぐらい声を出して応援した。


僕には不思議だった。何でそんなに必死に他人を応援できるのか………わからなかった。


試合は予想されていた通り僕の高校の負けだった。


試合に負けた事に泣いたのは、当然の如く野球部だった。


でも、それ以上に泣いている人がいた。


それは、僕の「彼女」だった。


泣いていた理由なんて後になっても聞いていない。


だから、彼女の気持ちなんてわからないが、1つだけ思った事がある。


彼女を見て他人の為にあんなに泣けるなんて、そんな姿を見て彼女を愛おしく思う僕はどうしようもなく彼女が好きなんだろう。


此れが僕が彼女の泣いている姿を初めて見た時の事。


僕が彼女を大好きだと自覚した事。


そして、あの時の野球部を見て、負けた姿を見て、集団で何かを目指すことのかっこよさを感じた。


僕はもう高校3年生だ。


今までの自分が『普通』だからと言って逃げるのはもう辞めよう。


もう遅いかもしれないけど集団で『何か』を目指してみたい。


目標に届かなくとも、あの日の野球部や吹奏楽部を含めたみんなで泣けるぐらいの事を。


改めて言おう。


「僕」は高校3年生だ。


部活にも入っていない。


でも、これから先に「僕」の『甲子園』はきっとある。


その時に向けて「僕」は走りだす。











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