第3話 新天地3

 和寇の親分に加えて厄介なのは街の荷隊を支配している豪だ。彼は日本から仲間を連れて流れてきた男で、伊賀の乱で逃げてきた忍者ということだった。凜も1度剣を交えたが勝負がつかなかったという。アユタヤでは中心部に館を構えていて息のかかった兵で3百はいるとのことだ。

「豪の一隊と凜さまが切り合いをしているわ」

 リーが知らせてくる。

 下忍を連れて町の中心まで走ると、60人ほどが入り乱れて剣を交えている。アユタヤでは日本人の刀を恐れている。まさに豪と凜が剣を交えている。豪は本物の忍者だ。服部の剣だ。凜も負けていないが勝負がつきそうにない。もう怪我人が多数出ている。

「お前が夜叉の姉か?」

「服部だな?」

 豪が刀を茉緒に向けた。ゆっくり茉緒も刀を抜く。

「藤林だな。魔王と恐れられていたな」

「よく知っているな」

「よく襲われた」

と剣を突き出してくる。

「だが伊賀の乱では味方になったこともあるわ」

と言って急に剣を引いた。

「慎吾の片腕だった男?」

 凜が口をはさんだ。

「慎吾懐かしい名だな。だが昔のことだ」

 そうだ。私たちは流れ者同士だ。茉緒も剣を引いた。豪と顔を合わしたのはアユタヤに来て初めてだ。

「一度ゆっくり話をしよう」

 ここでは服部も藤林もない。






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