1day part3 ~第六の純血種と猫愛好家探偵?~
人通りの多い所を避けるように街を出て人気のない廃ビルまで歩いた。
セブンがずっと後方を気にしていて私もセブンの考えに気付いた。
いつからかは分からないが私たちは誰かに後をつけられていた。
「この辺でいいかしら?ここなら人が来ることなんてないわ。」
「ああ、血の匂いは濃いが人の気配はないな。」
セブンの言う血の匂いは私にはわからなかったが、この廃ビルは殺人及び失踪事件の事件現場だった…とは言っても10年以上前の事件だが。
そんなことよりも私たちが誰につけられているのかが気になる。
セブンは一つため息をついて喋った。
「いつもでそこに隠れてるんだリーア。」
セブンの呼びかけに反応して出てきたのはハンチング帽子を被った茶髪の若い女性だった。
「隠れるつもりじゃ無かった…。でもセブンが知らない吸血鬼といたから…。」
「リーアがいるという事はやっぱり全員目覚めたのか?」
女性はこくりと頷く。
「どこかで集まってるのか?」
「わからない…けどあまり遠い所には言ってないと思う。セブン…。」
女性は涙目になりながらセブンを見つめる。
「どうしたリーア?何かあったのなら話を聞くぞ?」
「うぅ…違う…私のせいで守れなかったあの子の事…。」
二人の会話は今の私には分からないが、リーアという女性がセブンの知り合いという所から彼女が純血種であることを私は察した。
「リーア…すまない…。」
「セブンが謝る必要なんてないの!私のせいで取り返しのつかない事になってしまったから…セブンは私を責める権利がある。」
「そうじゃない…封印される前の記憶が無くて知識と純血種全員の事しかはっきりとは覚えてない…。」
リーアの顔は青ざめ、2人の間に沈黙が続いた。
私はその場に居づらくなり少し席を外す事にした。
廃ビルの上の階層へと上がり猫が群がりを見つけた。
「こんな所で猫が集まるなんて少し不思議ね…。」
さっきの思い空気のせいか少しでも気を紛らわす為に独り言が出ていた。
「別に不思議なことじゃないよ。」
私の独り言に対して猫の群れから声が聞こえる。
猫が喋る訳…なんて考えていたら、猫の群れの下敷きになっている男の人を見つけた。
「ここで昼寝してるといつもこうなるんだよね。」
「大丈夫ですか?助けましょうか?」
「あー大丈夫大丈夫。これぐらいなら全然起き上がれるから。」
黒髪の20代後半の男が猫を数匹抱えながら起き上がった。
「俺は片桐翔(かたぎりつばさ)猫愛好家探偵やってるよ。」
と言いながら私に名刺を差し出したの私は受け取った。
名刺には片桐探偵事務所と書かれていて電話番号や住所も書かれていた。
「私はセシルです。よろしくね片桐さん。」
「おう!って俺は翔って呼んでくれていいよ。妹と一緒にいる時とかややこしくなるから。」
「わかりました。翔さんはどうしてこんな所で昼寝を?」
「事務所に客が来たら助手から連絡を寄越す様に言ってるから依頼がない時は毎日が日曜日みたいな感じだよ。」
助手がいるという事はやっぱり本格的な探偵なのかしら?
「探偵って案外忙しくないんですね。」
「まあね~忙しい時は大変だけど普段はのんびりできるから悪くない職業だよ。」
喋っていると男の携帯電話の鳴った。
「あー失礼。妹から電話だ。」
翔さんが電話に出ると私にも聞こえるほど大きな声が電話越しで聞こえた。
「おにいちゃゃゃゃん!!助けてぇぇぇぇぇぇ!死んじゃうぅぅぅぅぅぅ!!」
「どうした美沙!?何があった?」
「台所に黒いのがぁぁぁぁぁぁ!!」
私は台所と黒いのというワードを聞いてゴキブリが出たのだと察した。
「Gの仕業か!美沙…待っていろよ。お兄ちゃんがそいつを全滅させてお前を助けてやるからな…。」
「わかった!お兄ちゃんが来るの…ずっと待ってるね…。」
翔さんは電話を切り携帯をポケットにいれると。
「俺の妹に手を出すなど…G共め!ゆ゛る゛さ゛ん゛!!」
今にも太陽の子になるのではないかと言わんばかりの気迫だった。
この人絶対…シスコンね。
「すまない。急用で行かねばならない…。何としても守らねばならないんだ!」
「あっ、はい。お気を付けて。」
翔さんが全速力で走り去ると私は溜め息をついた。
「見てるだけで疲れたわ…そろそろセブン達は話が終わったかしら?」
私が戻るとリーアがセブンに抱き着いて泣いている所を見てしまった。
あんまり重い空気は好きじゃないし二人の用が済むまで野良猫の相手でもしてた方が良いわね。
私は猫たちを可愛がっていると外から差し込む光が暖かくて眠たくなってきた。
10分もしない内に猫を抱えたまま私は眠っていた。
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