1day part2 ~Sの反撃/血を吸われた者の末路~

 こっそりと修道院を抜け出し二人で街を歩くが私は機嫌を損ねたままだった。

「朝食は何にするんだ?パンか?サラダか?それとも肉か?肉料理ならあっさりしたものが良いな。」

「私ね、今すごくストレスを発散させたい気分の。」

「飯前のウォーミングアップか悪くないな。」

「私ね、体を動かすよりも効率のいいストレス発散方法があるの。」

「それは興味があるな。是非聞かせてもらいたいものだ。」

「安心して食べるだけよ。」

「意外とシンプルな回答だな。まあそれはそれで悪くはないと思うぞ。」

 私たちは黙々と歩きセブンは車やら信号を見て感心していたが、特に何事も無く店に着いた。

「変わった店だな。カレー専門と書いてあるがカレーとはなんだ?」

「あなたカレーを知らないの?人生の9割損してるわよ?」

「いいだろう。損した9割をこれから取り戻せばいいだけだ。」

 店に入るとインド人が空いている席に案内してくれた。

「ゴチュウモンハ、ナニニシマスカ?」

 店員がメニューを差し出すと私はメニューを見ずに毎回頼む物を注文した

「デスカレーのマックスヒートを一つ。」

 セブンは私の注文を聞いてポカンと口を開けている。

「…??どれが良いんだ?お前のおすすめは?」

 セブンが私におすすめを聞いてきて私はついついニヤっとしてしまった。

「私と同じのがおすすめよ。」

「ならば俺もそれを頂こう。」

 店員は困惑していたがガクガクと震えながら厨房へ戻っていった。

「さて、早速だが本題に入るか。」

 セブンが突然真剣な表情になり私の目を見て言った。

「さて、今の代の純血種が全員で10人いることは知ってるか?」

 私は純血種がいたという事しか知らなくて純血種が他の吸血鬼との違いが吸血鬼だけの家系で継がれてきた事しか知らなかった。

「その様子じゃ、殆ど知らないようだな。

 純血種は産まれてきた純血種は世代毎に区別され産まれた順番で何番か決まる。」

「じゃあセブンは10人兄弟の7男みたいな感じなのね。」

「微妙に違うがそんな感じだな。あ、そういえば名前を聞いて無かったな。教えてくれないか?」

「セシルよ。」

「知ってる。」

「じゃあ何で聞いたのよ。」

「お前が今朝話してた人間の名前を聞いている。」

「初めからそう言いなさいよ。あの子はリリア私の親友よ。」

 セブンは顎に手を当て考え事をしているが私は嫌な予感がしてセブンに尋ねた。

「まさか、リリアまで吸血鬼にする気?そんなことしたら許さないわよ…。」

 私はセブンを睨みながら言ったがセブンはすぐに首を横に振った。

「いや、あいつは吸血鬼にする気はないし、それ以前に血との相性的に吸血鬼にはなれんだろうな。」

「そういえば血と相性が悪いとどうなるの?」

「吸血鬼に血を吸われたら混血種になるか食屍鬼(グール)になるかミイラになるかの3択だ。セシルは相性が良かったから混血種になったが、相性が悪ければただ血を求める肉塊になる。体が血に対して拒絶反応を起こせば体内の血液は全て蒸発してミイラになるか灰になるかだ。」

「相性が良いとか悪いのはその人の見た目で分るの?」

「そんなもの直感で言ってるだけだ。特に根拠があるわけじゃない。」

 何か理由があって判断してるのかと思った私がバカだったがそれ以上にこいつがバカだった。

「そういえば純血種って混血種に無い物とかあるの?」

 さっきとは違いセブンは少し真剣な顔になった。

「純血種には能力的な物があって個人によってそれぞれ違うんだが、能力は生まれつきで持っているんじゃなく、精神的に追い詰められたり、危機感を感じたりする事で潜在能力を引き出して覚醒する。」

「つまりピンチになったら能力が得られるのね」

「それと能力とは別に純血種は悪魔に血を与えて専属の使い魔にする事ができるな。使い魔と言ってもその悪魔を武器として使うだけだがな。」

「へぇ~純血種ってそんなことも出来るのね。セブンの使い魔はどんな悪魔なの?」

「聖職者の割には悪魔や吸血鬼に興味津々だな。」

「その聖職者を吸血鬼にしたのはどこの誰よ。」

「ッフ!この俺だ!(ドヤァ)」

「威張って言うな!あとその顔がムカつく!!」

 ツッコミを入れてると店員がカレーを二つ持ってきてくれた。

「オマタセシマシター。アツイノデ、キヲツケテタベテクダサイ。」

 料理を差し出すと店員は再び厨房に戻って行った。

「続きはご飯を食べてからにしましょうか。」

「そうだな。腹が減った状態で怒鳴られたから余計に腹が減った。」

「あーはいはいそうですか。」

 私もツッコミを入れる気力すらなかった。

 今はとにかくこのカレーを味わう事しか頭になかった。

 ターメリックライスにカレーをかけて食べると美味さと辛さが口の中で広がる。

 セブンも私と同じ様にしてカレーとライスを口の中にいれる。

 カレーを口に入れた瞬間セブンは突然顔が真っ赤になり、目が潤んでいる。

「しぇひる…こひぇかひゃいぞ…」

 辛さでセブンの呂律が回らなくなっていた。

 実はここの店のカレーは世界一辛いといっても過言ではないカレー専門店で私のお気に入りの店だ。

 正直言うと吸血鬼だからすまし顔で平然と食べたりするんじゃないかと思ったがセブンに対して有効であると分かった。

「しぇひるよ…けしゃのこちょはあひゃまるからひゃんとかひてくひぇ…」

「セブン…食事中は静かに食べるのがマナーですよ?」

「ひゃい…。」

 セブンは辛いのを我慢しきれず涙を流しながらなんとかカレーを完食した。

「んんっ~朝からカレーが食べるのが久しぶりだから美味しかったわ。」

「お、俺はもう二度とあんなもの食いたくない…それより話の続きだが…。」

 カレーで調子を狂わせてしまったのか話しづらそうだった。

「どうかしたの?仕返しのつもりだったけど、ちょっとやりすぎちゃったわ。ごめんなさいね。」

「いや、別に大丈夫だ。それより場所を移さないか?」

 もう少しここで話をしていても問題はないのではないかと思うがセブンも何か考えがあっての行動なのだろう。

「ええ。人気のない場所の方がいいかしら?」

「その方が助かる。」

 セブンは店内をチラチラっと見てから店を出て、私も会計をすぐに済ませて店を後にした。

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