1day Part1 ~吸血鬼と親友と純血種のセクハラ~

 目が覚めると私は修道院の自室で横になっていた。

 私は窓辺に立ち少しカーテンを開け窓から差し込む光に恐る恐る手を伸ばした。

 しかし、私の手は何一つ異常がなく体にも違和感すら無かった。

 傷のあった所に手を当てるとあったはずの傷口が無くなっていた。

 昨日の出来事は夢だったのかしら…。

 昨日の事思い返していると扉をノックする音が聞こえた。

「セシル?まだ寝てるの?」

 ゆっくりと扉が開き緑の髪の女性が入ってきた。

「あら?セシルったら起きてるなら返事くらいしてよ~。」

 彼女はリリア、私の親友であり、リリアも私と同じでシスターである。

「ごめんなさい。少し考え事をしていて気づきませんでした。」

「あらあら悩み事?もしかして男の事で悩んでる?」

 リリアはからかうつもりで言ったのだろうが、言われた途端セブンの事を思い出した。

 私は本当に吸血鬼になってしまったのだろうか?

 自分が人間でなくなれば私は人を襲うのだろうか?

 そんなことを考えているとリリアが少し悲し気な表情をしていた。

「セシル…今日は少し休んだら?ちょっと顔色悪いし、考え事もあるんでしょ?

 司祭様には私から伝えておくから大丈夫よ!」

 リリアは昔からよく気を使ってくれるのは嬉しいけど、もし司祭に禁書が無いことを知られていて突然休むとなれば司祭は間違いなく私を疑うだろう。

「それくらい自分で言うから大丈夫よ。ありがとう気を遣ってくれて。」

「こんな時ぐらい遠慮しないで私をパシリに使ってもいいのよ♪」

「ちょっと疲れが溜まってるだけだから本当に大丈夫よ。何かあったら頼らせてもらうわ。」

「うん!あ、相談があるならいつでも乗るからね!それじゃあゆっくり休んでね。」

 リリアが部屋から出ていくと私は一息つく。

 日光に触れても異常はないし、吸血衝動もない事を考えると、私は吸血鬼になったわけじゃないみたい。

 安心していると私しかいないはずの部屋で気配を感じ後ろを振り向くと見覚えのある男…セブンがいた。

「随分相性が良かったみたいじゃないか。混血種とは思えないほどの適応力だな。」

 この男はどこから入ってきたのやら…というよりもいつから部屋にいたのかしら…。

「突然レディの部屋に入ってくるとはいい度胸ですね。悲鳴でも上げましょうか?」

「まあ待て、お前の知りたい事を色々話してやろうと思ってな。あと、今ここで人を呼べば騒ぎになると思うぞ。」

 やはり禁書の事は司祭に伝わっているということか…。

「普通に考えてみろ。ここはお前の自室だろ?関係のない男と二人きりの所を目撃されたら誤解されるぞ。

 あ、禁書は元の場所に戻しといたし誰も気付いてないからセーフだぞ。」

 そういう意味で騒ぎになるのか…ってかなんで禁書の置いてある場所知ってるの?

 ってか何で気付いてないって分かるの?というよりこいつ私に変な事してないわよね…。

 セブンを睨んでいると彼はやれやれとため息をついた。

「とりあえず場所を移すか。ここじゃ誰かに聞かれたらまずいことが多いしな。さっさと出かける準備と財布を準備しろよ。」

「仕方ないわね。わか…って何で私が財布を準備しなきゃいけないのよ!」

 危うくつい流されそうになってしまった。

「なんでって、そりゃあ今の俺が無一文だからに決まってるだろ。」

「だから私に食事を奢れと?」

「大丈夫だ。それだけ血が馴染んでりゃ日光に当たっても何の問題もない。」

「私が気にしているのはそこじゃない!金銭面の問題よ!!」

「まさか…お前も無一文なのか!?」

「あんたと一緒にしないで!私はちゃんと働いてるからお金は持ってるわよ!」

「よし!それなら問題ないな。」

「どこが良しよ!私が問題大アリよ!」

「あんまり大きい声出して怒るとカルシウム抜けてくぞ?あと人が入って来ても知らんぞ?」

 ついカッとなってしまってセブンのペースに乗せられてしまった。

「仕方ないわね。今回だけだからね。すぐ着替えるから待ってて。」

 セブンを部屋から追い出すと私は昨日嫌と言うほど感じた恐怖を全く感じていなかった。|それどころかまるで友達と喋っているかのような感覚だった。

 私は頭を横に振り考え直す。

 私は何を安心しているの!?吸血鬼が目の前にいるのに放っておいたら私の様な被害者増えてしまうわ。

 敵意を持ってないことが不幸中の幸いね、今はセブンから吸血鬼の情報を聞いて打開策を考えないと…。

 すると服を脱いでる途中に鍵を閉めたはずのドアが開いた。

「もう着替え終わったろ。さっさと行くぞって…あっ…そうかキレる割には着替えはマイペースなんだな。ノックしなかった俺が悪かった。」

 そっとドアを閉めようとするセブンに向かって私は側にあったナイフを怒りに身を任せて投げた。

 投げたナイフがセブンの顔に刺さり血が流れる。

「ぐはっ!?いってぇっ!!たかが下着姿を見られただけでここまでするか!?乱暴な女はモテないぞ!

 あと胸は大きすぎず、小さすぎないから黙っていれば男から結構好かr…ってあぶねっ!二本も三本もナイフを投げるな!落ち着け!

 これはお前をけなしてる訳じゃない!褒めてやってるのだ!分かったからナイフを投げるのをやめろ!これ以上投げると誰にとっても不幸な結果になるぞ!」

 あまりに激昂して部屋にあったナイフを全て投げてしまった。

 私の部屋の前には大量のナイフが散らばっているが、幸い誰もいなくて目撃すらされてなかったため騒ぎにはならなかった。

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