3-3

 昼前になってから、雄大と雄吉は家を出た。

ミンミンゼミが近くで鳴いているのを聞きながら、ムシムシと湿り気を帯びた世界の中へ飛び出していく。

雄大「雨が降らないと良いけどな。」

空には一面白い雲が覆っていたが、直ちに雨が降ってきそうな気配はない。却って直射日光を遮ってくれているので歩きやすかったほどだ。

雄吉「なんだかさ、家の中と外の気温と湿度の違いが大きすぎて、変な感じだね。」

昨日雄大から貰った野球帽の鍔の位置を調整しながら空を見上げる雄吉が返事を返してきた。

雄大「まぁ・・・。」

70年前の生活を考えてみる。

クーラーなんて物は無く、扇風機さえ無かったかもしれない。

涼を取るとしたら、窓を開けて風を通して、団扇うちわで扇ぐくらいだろうか。

今ではそんな方法で涼を取っていたら、間違いなく熱中症で倒れてしまうことだろう。

70年前の夏よりも現代の夏の方が暑くなっていることは確かだろうし、あの当時不要だった物が、今では無くてはならない物に変わっているのも事実だった。

雄大「雄吉が居た頃は、今よりも夏が暑くなかったから、こんなに温度差感じることもなかっただろうな。」

若干の羨望の念を込めて、雄大は雄吉に言っていた。

雄吉「初めて家の中に上がらせてもらったときにさ、家の中が涼しくて、びっくりしたよ。どうしてこんな春先くらいの気温になっているんだろうって、驚いたし。」

そうだろうな。うちは、基本的に夏場の日中はクーラーを自動運転にして付けっぱなしにしておくからな。帰ってきたら快適な温度環境になってるさ。もちろん、そんなことを知らない70年前を生きてきた雄吉には、それすら信じられないことだろうけど。

雄大「今はエアコンっていう、温度調節するための機械使って室内の温度を快適にしてるからなぁ。そうでもしないと、暑すぎて身体が耐えられない。現にエアコン使わないで夏場生活していたら、脱水症状が酷くなって死亡したっていうニュースもよく聞くし。」

雄吉「70年の間に夏の温度がそんなに上がっているのか・・・。」

腕を組んで、自分の影と睨めっこでもするかのように考え出す雄吉だった。70年後の日本の夏が、当時よりも暑くなっていることに対し、雄吉はどう感じているのだろうか。何でそんなことになってしまったか? このまま暑くなり続けて、日本でもアラビアみたいな灼熱の国のように変わってしまうのだろうか? そんな日本で、それまで温暖な気候で生活してきた日本人がしっかりと生活していくことなんてできるのだろうか? この暑くなり続ける現象を抑制することはできないのか?

そんなことを思ったり考えたりしているのだろうか。

難しそうな表情で俯く雄吉の横顔を眺めながら、雄大はそう思った。

そして、しばらく黙った後に、その沈黙を破るように雄大が雄吉に語り掛けた。

雄大「きっとこの後、いろんな建物の中に入ったり出たりを繰り返すから、その都度温度差に苦しめられるぞ。」

雄吉「そうなのかぁ。体調崩さないように注意しないとなぁ。」

一旦雄大のことを見上げてきた雄吉であったが、またすぐに腕を組みながら視線を下げて歩くようになった。

温度を自由に調整できるのが当たり前の世の中へ、突然温度制御不能な時代を生きていた人がやってきたら、きっと困惑するだろう。特に、体調が根を上げる。温度調整が十二分に行き届いている建物の中と、そうでない自然状態の外との間には、かなりの温度差があって、それは人間の身体を間違いなく狂わせて蝕んでくる。

現代の人間でもこたえることなのに、雄吉のような70年前の人間が来たらひとたまりも無いだろう。

雄大「建物入って寒かったら、俺に言えよ。念のため、軽めの羽織るもの持ってきたから。風邪なんか引いて残りの日数無駄にだけはするな。」

雄吉「うん、ありがとう。」

それからの雄吉は、視線を下ではなく水平に向けたり上に向けたりと、歩きながら、街並みを観察していった。

これは前日と同じ光景だった。

線路沿いに出たとき、ちょうどよくまた銀ピカの電車が走ってきた。

雄吉「わ! また来た! 銀ピカ電車。」

無邪気に喜ぶ雄吉を見て、雄大はさすがに呆れ始めて苦笑いしていた。

あんまり露骨に銀ピカの電車を見るだけで喜ばれては、周りの人の目が気になるのだ。

当たり前の光景を珍しがる人を見るとき、それはどこか冷ややかなものを含むこともある。

気分のいい視線ではないからだ。

雄大「もうすぐあれに乗れる。だからそんなにはしゃぐなってよ。」

雄吉「え? そう?」

楽しそうな表情のまま、雄吉は答えてきた。

雄大「・・・・・」

そんな楽しそうな雄吉を見ると、それ以上は言いにくくなってしまう。雄大は苦い物でも口に含んだような気分でこらえることにした。

そんなこんなで、ようやく駅に辿り着いた。


 まず雄大がやったことは、ICカードを購入することだった。

雄吉用に鉄道で使えるICカードを用意しておいた方が、移動に際してはだいぶ楽になる。一度改札口の通り方さえ見せておけば、ただカードを改札機の読み取り部分にタッチするだけだからだ。一回いっかい切符を購入して渡すよりもはるかに効率的だ。

雄吉「何このカード?」

早速購入したICカードを雄吉に渡したときの雄吉の反応だった。

雄大「これが電車に乗るときの切符になるんだ。」

雄吉「へぇ~。」

珍しく感じているのか、雄吉はICカードをいろんな角度にかざしながら眺めていた。

雄大「今から改札口を通るから、よく見ていろよ。」

雄吉「う、うん。」

改札機の前まで雄大が来ると、わざとらしくICカードを掲げ、それを改札機の読み取り部分にしっかりとタッチしてやった。ピッという音と同時に、改札機のバーが開いた。そして、そのまま改札機を通り抜ける。

雄吉「おお。」

雄吉は目を丸くしながら様子を窺っていた。

雄大「雄吉も同じように、そのカードをその部分に当てれば良いんだ。」

雄吉「わ、わかった。」

今度は雄吉の番だった。雄大から受け取ったICカードをかざしながら、改札機の読み取り部に乗せた。

ピピッという音と共に、改札機のバーが開く。

雄吉「お! 開いたよ。」

じっとその場に立ち尽くす雄吉だった。早くしないとバーが再び閉まってしまうぞ!

雄大「早くこっち来いって!」

思わず右手を大きく振って手招きしてしまった。

雄吉「お、おう。」

雄吉が改札機を通り過ぎる。

雄吉「こんな感じで平気?」

雄大「問題ない。ただ、ピッて音がしたらバーが開くから、すぐに通り抜けること。後ろにもすぐ通る人が居るから、あんまりのんびり進んでると迷惑になるぞ。」

雄吉「あ! そうか、今度から気を付けるよ。」

とりあえず、最初の関門は突破した。

そんな気分に雄大は苛まれていた。

雄大「よし、乗り場へ行こう。」

雄吉「うん!」

雄吉はさらに楽しそうであった。

まるで遠足にでも連れ出されている小学生のような笑顔だった。

ホームで待つこと5分ほどで、横浜方面へ向かう電車がやってきた。

雄吉「ついに来たなぁ。」

本当にコイツは、この電車に乗れるのが嬉しくてたまらないんだな。特攻隊往って命張って敵の戦艦に体当たりしてきたって言うから、どんなことにも動じない厳ついとこありそうっていう先入観あったけど、案外、中身は無邪気な奴だったんだな。

そんなことを思いながら、雄大はホームへ入ってきた銀ピカの電車を楽しそうに眺める雄吉のことを見守っていた。

昨日初めてこの車両を見たときからときめいていた雄吉だった。そんなときめきを掻き立てた銀ピカの車両が今、目の前で止まった。

まだ落成してから間もないステンレス無塗装の車両は、その車体の銀色が眩しいくらいで、側面上部に設置されたフルカラーの行先表示の電光掲示が、如何にも近代的な雰囲気を醸し出していた。

チャイムの音が鳴動しながら両開きの扉が開く。

中に乗り込んで、発車を待つ。

10秒もしないうちに、発車を知らせるメロディが流れてきては、ドアが閉まる。

そして、ゆっくりと動き出していく。

車内に乗り込んでから、雄吉はしきりに辺りを見渡し始めていた。右に左に、上に下に。

とにかく細部にわたってよく観察をしているように雄大には見えた。

横浜駅の手前まで来ていたこの電車の車内は、日中でも既に横長の座席はほぼ埋まってしまっていたほどで、所々に立ち客も目立っていた。しかしそれは、いつもの光景でもあった。

概ね10分に一本は電車がやってくるが、それでも車内の座席が埋まるくらいの乗客が乗り込んでくるのだから、やはりこの近辺の街は住んでいる人も多く、常に大勢の人間が移動をしているということをよく表していた。

雄大は雄吉の様子を窺いながらも、時折ドアの上に設置された液晶モニターで放映されているニュースや天気予報、CMとかを眺めて過ごしていた。

雄吉「ドアの上にもテレビがあるんだね。」

雄大「あぁ、まぁな。次の駅とか、乗換案内とかが表示される物と、ニュースとか天気予報とかの情報番組が流れる物があるんだ。」

雄吉「ふ~ん。」

雄吉もドア上部のモニターに視線を向けていた。


 途中で一つ駅に停車して、10分弱の乗車で横浜駅に到着した。

横浜駅は当然のことながら横浜市の中心かつ代表的な駅であり、JR線の東海道線をはじめ、横須賀線に京浜東北・根岸線、横浜線、湘南新宿ラインが乗り入れているほか、私鉄も京急線や東急東横線、相鉄線に市営地下鉄、みなとみらい線も発着する大ターミナルになっており、乗り入れている鉄道会社の数では日本一の駅である。

乗客の大部分がこの駅で降りていた。

雄大と雄吉もその降車客の中に入り込んで、横浜駅の3番線、京浜東北線のホームに降りていた。

雄吉はまた、周囲をキョロキョロと見渡していた。

少しだけ待ってやるか。

雄大はそう思い、ホームの真ん中で歩くのをやめた。

雄吉は不思議そうに雄大のことを見上げてきた。

雄大「どうだい、70年後の横浜駅は?」

雄吉「いやぁ、なんかもう、本当別世界みたい。やってくるもの全部が電車だし、それに、全部銀ピカだし。」

このホームの隣の東海道線のホームや奥にある横須賀線のホームに視線を移しても、やってくる電車のほとんどがステンレス無塗装で路線色の帯を巻いた、銀ピカの形態で走っていた。帯の色こそ青だったりオレンジや緑だったり、黄緑色だったり藍色だったりするが、車体の大部分がステンレスの銀色だった。

後ろを振り返ってみると、今度は京急線の赤い電車が走っているのが見えたが、こちらも銀色の車体に赤色と白帯がアクセントになっている車両だった。

少なくとも、雄吉が見てきたような茶色の車体の電車などはどこにもない。

雄吉「それに、人も多いし、列車はたくさんやってくるし。すごいな。」

このエリアだけでも10個の乗り場があった。そこへやってくる電車は相当な本数で、路線や方向を考えなければひっきりなしに電車がやって来ていた。

至る所から発車のメロディが鳴り響き、駅員のアナウンスが流れている。電車の接近を知らせる自動放送が流れたり、次の電車の案内が聞こえてきては、電車の走行音が轟き続ける。

まるで、どこかのお祭り騒ぎのようである。

雄吉「すごく、色鮮やかになったって思うよ。電車が。色んな色の電車があるんだね。」

雄大「そうだな。路線ごとに色が決められてるから。特にここは、いろんなとこから電車がやってくるしな。」

雄吉「そうなのかぁ。こんなふうに、なっていくのかぁ。」

きっと雄吉は今、自分が生きていた時代の横浜駅と、70年後の横浜駅を重ね合わせているに違いない。あの頃とは大きく変わっていった未来の同じ場所。雄吉はその変化について、どんな気持ちで目の当たりにしているのだろうか。

雄大「気が向いたら出発するから、よかったら言ってくれ。」

雄吉「うん。もう大丈夫だよ。」

雄大「わかった。」

再び歩き出して、改札口のある地下へ続く階段を下る。

改札口を抜ける。

雄吉もICカードの使い方の要領を得て、すぐに改札機の横を通り抜けてきた。

もう、あんまり心配する必要もないかな。

そう雄大は安心していた。

考えてみたら、戦闘機を操縦できるくらい、機械には慣れている人間だった。ICカードを改札機の読み取り部にタッチすることなど、難てことなどないだろう。

改札口を抜けた先は、横浜駅の中でも特に混雑激しい中央通路だった。

雄大「いいか? 俺の傍から離れるなよ。」

雄吉「了解。」

まるで敬礼でもしてはいないかと思わせるような雄吉の返事だった。

日中でもラッシュ時間帯でも、常にこの中央通路は人でごった返している。これほどの人がどこから涌いてきたのだろうかと思うほどだ。真っ直ぐなんて歩けやしない。常に周りの人の動きに目を配らせながら、自分が進むべき経路を見極めて前へと進む。知らず知らずのうちに雄大に身に付いていたことだった。

雄吉「そういえばさ、さっき電車の中のテレビで地下鉄に乗り換えられるってあったけど。」

中央通路の中ほどまでやってきたとき、雄吉が聞いてきたことだった。

雄大「市営地下鉄だろ。」

雄吉「うん。横浜にも地下鉄が出来たんだ?」

雄大「あぁ。戦後に整備されたみたいだったぞ。」

雄吉「そうなんだ。」

前や横からやってくる人の波を掻い潜りながら、前へ前へと目指して進む。まるで、大海のど真ん中を小舟で漕いで進んでいるかのような感じだ。

雄大「逆に俺も聞きたいんだが。雄吉が居た頃の横浜駅って、もう他の私鉄とかも乗り入れてたのか?」

70年前の横浜駅にやってくる鉄道は、どれくらいあったのだろうか。そんなことを雄大は思ったのだ。

雄吉「うん。だいたいはね。京浜電鉄と東京横浜電鉄と、神中鉄道だから相模鉄道か、その3つは横浜駅に来てたよ。」

雄大「そうすると、今とあんまり変わっていないんだなぁ。それに市営地下鉄とみなとみらい線を足せば同じだし。昔からずっと、この駅に乗り入れて来てたんだなぁ。京急も東急も、相鉄も。」

雄吉「けど、駅の様子は全然違うけどね。」

雄大「そりゃ、まぁそうだろうな。」

東急線の乗り場へと続く通路を横目に見ながら歩く。

駅ビルの中を歩く。通路の両側に店舗が並ぶ賑やかな場所だが、その分人通りも多く、まだまだ油断ならない。そのまま相鉄の乗り場の下を通り、五番街へと抜けた。

雄吉「この辺は、何もなかったはずだけど・・・。」

雄大「そうなの?」

雄吉「うん。ずっと砂利置き場になってた。」

雄大「そうだったのか。」

また、知らない横浜の歴史を教えてくれた。

雄大「今じゃこの辺りは、繁華街になってるしな。買い物とかカラオケとかボーリングとか、遊んだりする場所も多いしな。映画館もあるぞ。」

雄吉「そうなんだね。人もたくさん歩いてる。」

帷子川かたびらがわの上に架かる大きな橋を渡る。橋の上ではクーポン券やティッシュを配るバイトの若者が点在して立っており、道行く人へと愛想笑いしながら配っている様子が窺えた。

そんなティッシュ配りの脇を通りかかった時、雄吉の前にポケットティッシュが回されてきた。雄吉は戸惑いながらも受け取り、小さく「ありがとうございます」とお礼を言って通り過ぎていった。そんな様子に、雄大は思わず笑ってしまった。

雄大「わざわざお礼なんて言わなくてもいいのに。」

雄吉「そ、そうなの?」

困惑の表情を見せながら、雄吉は聞いてきた。

雄大「ああやって道行く人に配るのが仕事だし、タダで配ってるもんなんだから。」

雄吉「タダで配ってるの?」

今度は単純に驚いているようだ。

雄大「そうだけど。それが?」

雄吉「いや、チリ紙をタダで貰えるなんてって思ってしまって。」

なるほどな。昔はチリ紙買うのも苦労してたってことか。それが今じゃ、タダでもらえる訳だしな。質さえ考えなければ、ティッシュペーパーなんて買わなくてもやっていけるんじゃないか?

そんなことも考えられるほどに、今ではティッシュが当たり前に流通している。

雄大「そのティッシュの裏に紙が挟まってるだろ? その紙がお店の広告だったりクーポン券だったりするから、よかったらお店に来てくださいっていう誘導商法さ。」

雄吉「なるほど。ビラやチラシを配るよりも、チリ紙渡すなら受け取ってくれやすいかもしれないな。そういう投資もありなのかぁ。」

興味深そうな表情で、雄吉は受け取ったポケットティッシュの裏面を見詰めていた。雄大がポケットティッシュの裏面にふと目をやると、どうやら近くのコンタクトレンズの店の限定クーポンのようだった。

ま、無難なところかな。

時折風俗店の案内などが入ってる場合もある。お互い年も20を越えており、そのような店でののこと自体、わからないということはないだろう。しかし、それでももし、そのについて70年前との違いを見つけて雄吉が質問してきたら、これだけ人で溢れかえった白昼にどうやって答えるべきか、悩ましい話になる。そのため、コンタクトレンズ店のクーポン券が入ってたことで幾分気が楽になった。


 橋を渡った先にあるビルに入る。このビルは多数の店が入る商業施設で、化粧品から靴に衣類、菓子類や本など様々な小売店が入っていた。主に10代から20代くらいに掛けての若者をターゲットにした商品を扱う店が多く、休日や夏休み期間中は高校生や大学生が多く、この日も土曜日であったことから学生たちの出入りが多くみられた。入口にあるカフェの横を通り過ぎ、中へ進むと、外気温の暑さを遮蔽するように乾いた冷気が火照った身体を包み込んできた。

雄吉「ここは? 百貨店?」

辺りを見渡しながら、雄吉が言ってきた。

雄大「ちょっと違うかな。いろんな店が入ってる建物って言った方がいいかな。」

雄吉「それは、なんとなくわかるけど。」

建物に入ってすぐ、右へ曲がる。エレベーターがある所へ至るのだ。

雄大「俺が良く行く古着屋を見てみようと思ってさ。雄吉に合う物がないかと思って。」

雄吉「え? 悪いよ、そんな。」

まさか本当に服を買いに行くとは考えていなかったようで、雄吉は遠慮と驚きと少しの期待が混じってか、表情が作れていなかった。

雄大「古着だからそんな高くないから、一着や二着くらいなら問題ないぜ。もちろん、俺も着れそうな奴でな。そうじゃないと、俺が使う服が無くなりそうなんだって。」

雄吉と生活を共にして2日経ったが、彼と着る物を共用していたためあっという間に着替えの服が減ってしまい、この日の朝は着る物に困ったのだった。だから、雄吉が滞在している間の服を調達したいという雄大の思惑もあった。

雄吉「ご、ごめん・・・。」

雄大「気にするなって。それより、雄吉に合いそうな服探してみよう。この時代の服装も体験してみるって言ってたろ。」

雄吉「う、うん。雄大、感謝。」

軽く頭を下げるくらいの、親近感のある礼を雄吉がしてきたのを見てから、雄大はエレベーターのボタンへ近寄った。

雄大「さ、行こうぜ。」

雄大はエレベーターのボタンを押して、雄吉にそう声を掛けた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る