マッスルマン 対 通販
「なん......だと!?」
私はその報せに驚愕した。
「今週の目玉商品はこの
なんという事だろう。
何もしないでマッスルになれるアイテムが市販されたという。
これは由々しき事態だ。このままでは世界中の老若男女がマッスルになってしまう。
「それは困る!!」
それは私のアイデンティティの喪失を意味する。
怪人が来るより何倍もピンチだ。
しかも、私が長年の忍耐により作り上げたこのマッスルを得るための夢のアイテムが、だったの7万五千円(税別)など
「実に安い!!我が青春の価格としてあまりに理不尽だっ!!」
私はこの上ない憤りを覚えた。
そして、すぐに、販売業者に連絡を取ると言った。
「速達で送って下さい。あ、はい。名義は正木勝です。はい」
やむ終えない事だ。
販売業者は悪の秘密結社ではない。
「ならば、私に出来ることは皆に負けぬようさらにこのマッスルを磨きあげることだけだ」
そわそわしながら待つこと2日と13時間、速達のあのアイテムが届く、と、同時に装着。
「夢のようなアイテムだ。これでほっておくだけで
そうして一月だ。
「効果がない!!どころか!筋トレの時間が減って筋肉が減退したぞ!!」
確かに説明書には個人差があると記述はされている。
しかし、私はこの一月、食事の摂取も、寝るときも、会社にいる間でさえもずっとヴァイヴし続けてきた。
誰よりもこのヴァイヴをし続けてきた。
だから、分かる。
このアイテムを買って数日ちょろっと使った俄かヴァイヴァーとは違う。
「これは、粗悪品だ!!」
私の中の正義の血が騒ぎ出す。粛清の時か?
「いや、落ち着こう......」
私には今、可及的速やかに行うべき使命がある。
失った力の再建だ。
その為にはこんな企業と戦っている暇はない。
が、見過ごして良い悪事では断じて無い。
どうしたものかと悩みあぐね、はたと思い出す。
「そうか。この手があった」
私は徐ろに携帯電話を取り出すと◉ッターを起動した。そして、ツイッタ◉にこう書き込んだ。
【この商品マジクソだから。全然効果ないから。絶対買っちゃダメだから】
「よし!これで騙される人間が減るはずだ」
私はマッスルマン。
いかなる手を使おうとも世間の悪事を見逃さない。
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