エンディング

第三十八話『ネタバレ』

「ったく、これは一体どういうことだ!」


 後日談というか、今回のオチ。

 僕は正座されている優実、理奈、エミリー、美奈子に向かって言う。

 やれやれ、脅かしてきたのは優実とエミリーだということだ。しかも四人全員で僕を嵌めようとしていたらしい。はっきり言ってしまうと今まで僕以外の行動はすべて演技。

 もちろん、美奈子も睡眠薬なんてモノは用意していないし、理奈も高所恐怖症なんかじゃない。

 アレは僕を怖がらせるための演技の一つである。そもそも、おかしいと思ったよ。

 いっつもドカドカと僕の部屋に入ってくる理奈がその時だけ高所恐怖症とかありえないもん。

 この壮大な劇場の目的はエミリーと美奈子と理奈を仲良くさせること。

 僕に少しでも今、自分に置かれている状況を確認させること。

 理奈と美奈子の僕に対する気持ちを確かめること。だそうだ。

 やれやれ、僕はとんだピエロを演じていたってワケか。何だろう、この敗北感は。


「ハル、ごめんね。」

「は、晴馬…ごめん。」

「ごめんねぇ~晴馬くん。」

「ごめんね。お兄ちゃん。」


 四人それぞれが謝ったのを確認した僕ははぁ…とため息をつくと言う。


「ああ、まったくだ。というかこんな壮大なことしなくてもよかったのに…。」

「「「え?」」」


 その言葉に四人が反応する。ほぼ同時に。

 やれやれ、お前らがコマを大きくしたせいで僕のコマが弱く見えるじゃないか。


「ったく、食器も片付けないで。何をするのかと思ったらそういうことか。別に色々こっちだって用意してあるから焦る必要なんてなかったのになぁ。」

「ん?お兄ちゃん。どういうこと?」


 優実が聞く。僕は静かにモノを取り出した。


「ほれ、季節は早いけど花火を買ってきた。これで、少しは楽しもうぜ。今回のことは水に流してやるからさ。」


 僕の取り出した花火にいち早く食いついたのはエミリーだった。


「わーい、ニッポンの花火!私、一度見て見たかった。」

「それは良かった。ほら、お前らも外出てやるぞ。」


 僕の言葉に美奈子と優実もしぶしぶ頷く。


「はいはい。分かったよ。ほら、優実ちゃんも早く。」

「踊らされていたのはこっちだったのかもね。」


 三人が玄関まで行ったところで、理奈が僕の服を掴む。


「どうした?僕の顔になんかついているか?」

「いや、そうじゃなくて。少しじっとしていて。」

「?」


 そういうと理奈は僕の頬にキスをする。

 幸い、エミリーが点火した花火のおかげで誰も見ていなかったようでほっと一安心している僕。

 それを見て理奈が言う。


「お詫びよ。」


 その言葉で理解をした僕は納得の表情を浮かべる。


「あー、そういうことね。」

「ほら、晴馬も。」

「?」

「だからぁ、お返しのキスはないのって聞いているの!それくらいわかってよもう!」

「おまっ、声でけぇよ。」


 僕は震えるような目で撃ちあがっている花火を見る。

 すると、声に反応したのか獲物を見つけたような目をしている二人とそれを楽しそうに見つめる傍観者が一人いた。


「晴馬くん、それ、どういうこと?」

「お兄ちゃん。花火の時間って言ってなかった?」

「お、おう。そうだな。」

「おー、ハルと理奈はラブラブですねー。」

「ちょ、私と晴馬はまだそういう関係じゃ…。」

「話をややこしくするんじゃねぇ!」


 やれやれ、どうせこうなると思っていましたよ。ええ!


「ギルティ、ギルティ」

「お、おい…美奈子?そのうつらうつらと思える、死神のような表情をいち早くやめろ。というか誰か止めろ。」

「ふへへ…お兄ちゃん。覚悟はいいかな。」

「お前らふざけるのはいい加減にしろよな。でぇいこうなったら仕方ない。理奈、逃げるぞ!」


 僕は理奈の腕をつかむ。


「う、うん。行こう。晴馬。」

「いってらっしゃ~い。」


 僕たちはそのまま、家を飛び出し、笑いながら逃げた。

 もちろん、二人もついてきたままだ。そして、走りながら理奈は言う。


「アハハ!面白いね。晴馬。」

「ああ、僕としては散々だけどな。」

「「待て――」」


 曲がり角を曲がった時に、理奈が僕に言う。


「ねぇ、晴馬。」

「ん?」


「だぁいすきっ!!」

「おうっ、僕もお前が大好きだぜ!理奈!」

「待てや。ゴラァ!!」


 僕たちは手をつなぎながら、追いかけてくる二人を必死に逃げ回った。


 やれやれ、これがツンデレな彼女とヤンデレな幼なじみの間か。ま、悪くないからいいかな。


 そう思った僕は愛する人の手をしっかりと握りしめながら、夜の住宅街を走った。

 もちろん、次の日、迷惑行動をしたという疑いはかけられたけどな。やれやれだぜ。

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