第三十七話『ツンデレの弱点』
「なぁ…」
僕は後ろに捕まっている理奈に話しかける。
「やめてよ、私、実はこういうのは恥ずかしくってできない人なのだから。晴馬にだけよ。」
理奈から返答があったが再度、僕は尋ねる。
「なぁ…」
「やめてってば。怖いものが苦手なのは知っているでしょ?」
無論、初耳である。また一つ、理奈の苦手なものを知った。
「なぁ…」
三回目である。いい加減、疲れてきた。
「やめてって…いって…る。えっ?」
「お前なー…」
ここで息を吸い、少し大きな声で理奈に話しかける。
「ただ階段を降りているだけだろうか!!」
「だ、だって…怖いんだもん。」
「夜でもなんでもないし。お前、いつもどうやって降りているんだよ。」
「いつもは…手すりにつかまって…」
「小学生か!」
「高所恐怖症だもん。」
「あ、そうなの?ごめん。」
やれやれ、そうならそうと言ってくれればいいのに。なぜ僕がこんな突っ込みをしなくてはいけないのだ。他に、もっと適任がいるはずなのに…。いや、いないか。
「優実のところに行くだけだよ。怖かったら僕の部屋で待っていることはできないのか?」
僕は怖くて足が震えている理奈に聞いた。
「ま、またあの道を行くの?…やだよ。」
「高所恐怖症は低いところから高いところもダメなのかよ。それでどうやって僕の部屋まで来ているんだよ。」
「気合い。」
お前というやつは!!!やれやれ、しょうがない。
「分かったよ、じゃあ、絶対に動くんじゃねーぞ。すぐ行って帰ってくるから待っていろ。」
「う、うん。なるべく早くね。」
もちろんそのつもりだ。だがその前に…。
「あのー、理奈さん?」
「何よ。とっとと行って来たら?」
「手、離してもらえますか?」
「ハッ、ちょっ、ちがっ。もう!」
理奈はそういうと、おずおずと僕から手を離し、階段に座り込んだ。やれやれ、これでようやく移動できる。
「それじゃ、行ってくる。」
僕は階段を下りた。辺りは薄暗くもう少しで日没という状況にいる。
早くいってこないと…。
「よし、優実、エミリー、起きろー」
僕はリビングで寝ているはずの優実と優実の部屋で寝ているはずのエミリーを起こしに向かった。
「優実―、エミリー」
僕は二度、そう呼びかけたが、二人は一向に反応がない。それどころかリビングに物音ひとつ聞こえてこないのだ。
「おかしい…ただ寝ているだけにしては妙に静かすぎる。」
理奈は優実はグースカ寝ていたという。
つまり多少なりのいびきは聞こえていてもおかしくないのだ。
何かあったか?
僕は勇気を出してリビングの電気をつけた。
パチン
すると、白いものが僕の前に現れた。
「「わぁっ!!!」」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
僕の悲鳴がリビングに響き渡った。
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