第三十四話『反撃…開始!』
「晴馬くん?どうしたのさ。」
美奈子が心配になって僕の上にのってくる。
チャンスは今しかない。ミスったら負けだと思え。
「ふんぬっ。」
僕は美奈子を少しばかり利用して縛られていた手をほどいた。
そして、自分の意志でガムテープをはがす。
てこの原理というのはこういう時にでも使えるものなのか。意外だった。
とにかく、成功できてよかった。
美奈子は僕が自力で手足をほどいたことに驚いたのか、はたまた利用されたことに怒っているのか今までの優しい態度は消え失せていった。
「晴馬くん…。どうして君はボクの思い通りにさせてくれないのかい?」
その言葉を聞いた僕は自分の中で何かがスーッと消えていくような。
うまく、言葉には表せないけど、そんな感じがした。
やれやれ、僕の幼馴染みはどこまで間違った方向へと進んでいくのか。心配だよ。
間違った方向へ行こうと気づいているのなら、それを直せるのもまた、幼馴染みとしての特権だ。
僕は微笑を浮かべながら言う。
「おいおい、僕はお前の幼馴染みだぜ?間違っていることを間違っているって言わないで幼馴染みの名が語れるかよ。」
「そんな言葉で誘おうなんて考えだったら無駄だよ。彼女たちは今、ボクが仕掛けた罠にかかっているからね。」
なん…だと…罠…。
やはり、お前は僕が狂わせたのか。
はぁ…なーるほどね。
「道理で下から声が聞こえないわけだ。」
「さあ、グダグダ言っている晴馬くんにはお仕置きの時間だよ。」
やめろ!そう、言葉にしようと思ったが口が開かなかった。
なぜ?いや、答えは分かっているだろう?感情的になっているからだ。
僕は冷静な風を装って言う。内心はものすごく嫌だが。
「やめさせるわけにはいかないか?」
僕の言葉に美奈子は「?」といった表情を浮かべて返答する。
「うーん、少し考えようか。ボクがダメだって言っている理由にさ。君は少し考えたほうがいいね。ボクや理奈ちゃんの気持ちにさ。」
僕は軽く考える。
なんだ?何が原因でこういうことになっている?
僕はなぜ?どうして?
Answer:分からない…。
そして、答えが出てこないのを見た美奈子は僕に言う。
「でも、さっきも言ったけどダメだよ。これは晴馬くんがボクや理奈ちゃんを悲しませたから…。その、お仕置きということで理奈ちゃんにも事前に了承は得ているのだよ。後、いっておくけど、今、三人はリビングでぐっすりと眠っているよ。」
こいつ…まさか冷蔵庫にあったジュースに睡眠薬を仕込んでおいたのか…。
それがお前の罠ということか。
ここで僕は考えた。
どうして、美奈子が僕の部屋に入ってくることができたのか。
そう、それは自分で仕掛けた睡眠薬に僕たちが引っ掛かったのか確認をするため。
理奈と協力をしたということだからおそらく、優実のくすぐりに耐えた理奈は美奈子に電話。
そして、美奈子が入って来るや否や自身も睡眠薬を飲んで眠る。
やれやれ、少し考えればわかることじゃないか。
すべてを理解した僕は、天を仰ぎ、言う。
「そうか…僕はお前たちを悲しませていたのか。僕もどうにかして悲しませないようにしていたけどダメだった…という事か。ハハッ、残念だ。」
僕は諦めたように目をつぶる。
「もう…ひと思いにやってくれ。僕は逃げも隠れもしない。お前がやりたいようにやればいい。それでお前の気が済むならさ。」
こんなことで済むのなら、僕としても本望だ。
やれやれ、ヤンデレはこれだから難しい。
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