ボクのそばにいてね。ずっと、ずーっと一緒だよ。

第三十二話『ヤンデレの反撃』

「さてと、理奈さん、少し覚悟してね。それ…こちょこちょこちょ…」

「んっ…ひゃっ…ちょっ、優実ちゃん。」

 さてと、こっちも少しだけやりますか。

「こちょこちょこちょ…」

「んんんっ…ちょっ…あんたたち…いつまで…やって…ひゃん。」


 うん、満足、満足。

 と言いつつも、これ、目をつぶって聞いてみると絶対にエロいよな。

 お子様には『見せられないよ。』じゃなくて『見るものではないよ。』というプラカードを掲げたい。

 それにしても、大丈夫かな?いいえ、大丈夫じゃありません。

 僕の理性が!一度でいいからくすぐりにこういう反応する人を見つけてほしい。

 ぜひとも共感をしたい。と切に願おう。


「ようし、優実、やれ。」

「ラジャー、こちょこちょ…」

「んんんんっ///」

 

 さて…逃げるか。

 このタイミングで僕は部屋から脱走、自分の部屋へと戻る。という作戦を始める。

『ミッションスタート』と心の中で呟くと、バレないようにするために移動を始めた。

 そろり、そろり…と。よし、廊下へ出た。

 後は急いで二階へと行くだけだ。


「足音を立てないように…」


 下ではまだ、理恵が優実に弄ばれている。

 エミリーはそれを見てあわわっってなっている。今がチャンスだ。

 よし、いいぞ。後は僕の部屋へと入る。

 キィィ…

 ふぅ…よかった。


「やあ、晴馬くん。ささ、とりあえず座って、座って。」

「ああ。」


 ……ん!???

 部屋の中で待っていたのは白目が無いようにしか見えていないような美奈子だった。

 美奈子は時計を見て、静かにつぶやくようにして言う。


「うん、予定通りの時刻だね。晴馬くん、ところで君は何やっているのかな?足音が全く聞こえなかったよ。もう少しだけ来るのが早いと予想していたけど…。」


 どこから入ってきた?こいつが入ってこられるような余地はしていないはずだし…。

 そんな僕の思いを読み取るかのようにして返答をする美奈子。


「晴馬くんの玄関から普通に入ってきたよ。普通に玄関開いているのだもん。どうしたのかなって思って中に入ったら晴馬くんが説教しているし、どうなっているのか説明してほしいね。」


 ちっ、ここでこいつに遭遇してしまったことは本当に面倒くさい。

 どうにかして言い訳を考えないと…。

 いや、待てよ。考えなくてもいいじゃないか、理奈をくすぐっているのは優実であって僕じゃないのだから。


「あ、ああ。理奈が下で優実にくすぐられているだけだ。見てくるといいよ。」


 さあ、この馬鹿正直に答えた僕の努力は果たして必要性があるのか謎だが、まあ、そんなことはどうでもいい。

 今は、この状況を何とかしないといけないことが優先だからな。


「ふぅーん。」

「どうした美奈子?」


 な、なんですかね?その疑いような目は…。


「それじゃあ、晴馬くん、少し目をつぶってくれるかな?」


 ん?どういうことだ?

 そう思いつつも逆らったらさらに厄介なことになりかねないので僕はしぶしぶ目をつぶった。

 美奈子の腕が僕の額に近づいてくるのが感覚で分かった。


「優実ちゃんの冗談を流している晴馬くんだからわかると思うけど…。」


 ここで一つ区切って、続きの言葉を言う。


「晴馬くんの冗談は普段は許しているけど…今日は許さないからね。」


 あ…。

 そんなつぶやきが聞こえたと思った瞬間、僕は意識が真っ暗になった。

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