第三十一話『ツンデレの弱点』

 メシをのんびりと食い終え、僕はそういえば、と思いながら口を開く。


「あ、そういえば、優実、全くお前という奴は…人の承諾も得ずに勝手に決めたことについてはどう思う?勝手に!だけど。」


 大事なことだから二回言ったわ。

 僕はリビングで優実のみ正座をさせて、さっきの言葉を言った。

 優実は反省しているのか俯きながら僕の言葉を聞いている。


「はい…ごめんなさい…。でも、お兄ちゃんも半分悪いからね。」

「ああ、まあそうなのだが、全く、エミリーも少しはこういうことするなら事前に言っといてくれよ。親父じゃなくて僕の電話番号知っているだろ?」

「ご、ごめんね。ハル。」

「もういいよ。」


 ったく、しょうがない奴らだ。

 理奈を見習えよ。何も気にしていないじゃないか。


「あわわ…でも、晴馬とお泊り…あわわ…私もしたい。グヘヘ。グヘヘ。」


 ダメだこいつ。早く何とかしないと。

 だが、僕がおかしくなってしまうわけにはいかない。


「はぁ…理奈、落ち着け。今のお前は情緒不安定だ。そして、この中でお前が一番ヤバい。」


 僕は理奈の背中をゆっくり撫でた。


「ひやっ、ふぁ…ふぁぁぁぁ…ちょっ、どこ触って。ひゃん。」

「「!!」」


 な、なんだ?今、こいつの口から妙な言葉が聞こえたぞ…。


「おい、理奈。まさか。お前…。」


 確認のため、もう一度理奈の背中を撫でる。

 早くなでてやると別にそうでもないが遅くすると…。


「ふぁぁぁ…ひゃっ…ちょっ、やめ。」


 やはりか…理奈はくすぐったいのが苦手なのか…なるほど…。

 いや、なるほどじゃねーよ。ふざけんなよ。


「はぁはぁ…晴馬。いい加減にしてよ。私がくすぐられるのが苦手なのは知っていてやっているでしょ!」

「いいや?知らなかった。すまん。」

「嘘…何で知らないの?」

「いやいやそういわれても…。」


 それはお前が言ってないからだろ。

 はぁ、これで終わり終わり。もうやらないから。

 と、僕はそう思い、目でそういったのだが『これは、もっとやるしかないな!』と視線で合図をしてきた人間がいた。


「これは…いいね。」

「お前、ふざけんなよ。」


 妹の優実だった。

 おいおい、マジかよ。

 いや、だが、まぁ、できることならもう一回くらいはやっておきたい。

 あの反応は意外と楽しいし、なんかこう…なんかだよ!分かれよ!!

 瞬間、僕は優実のほうへと目線をやる。

 そして、優実はニヤリと笑うと僕のほうを通り過ぎ、理奈の後ろへと回った。

 そして、僕と優実の意見が合致した。


『お兄ちゃん、やるよ。』

『OK、任せな。』


 あーもー、今回だけだ、付き合ってやるよ。

 兄妹の視線での会話を一瞬で終了させ、僕と優実は理奈の背中を撫でるという名の『くすぐり』を始めた。

 あ、エロいとかそういうやつのあれじゃねーからな。一応言っておくけど!

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