そんな…たった一人、住むところもなく…僕の家に来ていいんですよ!何もない家ですが!!

第二十六話『天使が……金髪の天使が!』

「ハル。ニッポンジンハアイサツハタイセツ。チガウ?」

「ああ、そうだな。こんばんは。というかこんにちは?」


 彼女の名前はエミリー・クトリスト。

 中学校の時、アメリカからの留学生ということで一年間だけ一緒のクラスで過ごした人物だ。

 だが、エミリーは優実と同じ年齢。

 アメリカの飛び級でたまたま僕たちと同じクラスに配属されたということだ。

 ただ、隣に座る人がいないという教師の勝手な理由だけで僕の横に座るようになった。

 当時のエミリーとの事は思い出したくもないのだが、大変な厄介者だった。

 トイレの男子と女子を間違えたり、授業中に自分の海外であったことを話し始めたり、いろいろあったが何より苦だったのは僕の隣に座る人が現れたということだ。

 友人関係を持ったら僕のせいでその人が迷惑を被ると考えていた僕は最初の自己紹介も適当にあしらっていた。

 そうしたら、エミリーは僕をあろうことか元気のない奴だと勘違いし、必要以上に構って来た。

 僕は何度も「構わなくていい。」と言ったがエミリーは聞く耳を持たずに僕を構い続けた。

 おかげで人と相手をしたら疲れるということをこの時の一年間で学んだよ。

 あと、金髪な。


 エミリーは笑みを浮かべながら僕に向けて言う。


「パパノ、ヨウジデマタ、イチネンカンダケニホンノガッコウニオセワニナリマース。」


 やれやれ、相変わらずわけの分からない奴とその親父さんだ。

 僕はエミリーの親父さんが何をやっているのかは知らない。

 自分の親で精一杯だからだ。


「それは分かったが、僕とお前は学校が違うのではないか?それも学年も違うし。」

「チッチッチ、ソノシンパイハイラナイデース。パパニタノンデ、ハルトオナジガッコウニシテモラッタデース。」


 は?


「はっはっは!エミリー、冗談はよせ。僕はそんな冗談に突っかかるほどお人よしじゃないぞ。」

「ジョウダンデハナイデース。」


 瞬間、沈黙が訪れた。

 今、こいつは何を言っている?

 僕と同じ学校?

 そんなたちの悪い話は聞いてないし、エイプリルフールネタにしては早すぎる。

 と…いうことは…


「マ?」

「ホントデース。」

「嘘だ!」

「ウソジャナイデース。」


 う…うわぁぁぁぁ。

 僕の平穏な学校生活がこいつによってぶち壊されることになる。


「よし分かった、お前が僕の学校に来るのなら僕が代わりにお前の学校に行くから。」

「落ち着いてお兄ちゃん。それは意味が分からない。」

「ナンデデース?ワタシハ、ハルトイッショニガッコウニイクノデース。イキタイノデース。」

「登校拒否してもいいですか?」

「コトワリマース。」


 神よ…あなたはどうして僕にこのような試練を与えるのでしょうか?

 今日一日でピンゾロ揃えられるレベルにはなったと思う。

 よし、パチンコ行けば確変でるぞぉ。

 僕は半分諦めた口調でエミリーに向けて言う。


「あー、分かった。それと片言な言葉は辞めてくれ。確かお前は日本語ぺらぺらで話せたはずだろ?」


 こいつは留学生のくせに日本語はメチャクチャうまい。

 だから片言で話されるとものすごく違和感がある。


「OK、ほな、普通に話させてもらうわ。」


 京都弁でしゃべるわけのわからない奴だ。


「てめぇ…ふざけているのか?そういうボケはいらないのだよ!」


 疲れる…。

 やれやれ、どうしてこうも無慈悲な人生を送ったのか…。

 京都弁かよ…。

 アレ?あの先輩はどっちだ?京都弁か?関西弁か?分からん。

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