第二十七話『キン…パツ!!』
「冗談、冗談。しかし、ここも変わってないね~。優実ちゃんは元気?」
「元気だよ~」
話をころころ変えやがって…ったく、だがこれで落ち着いて会話をすることができる。
「ああ、僕も優実も元気だよ。」
「そっか~。」
エミリーは僕たちの体調が万全であることを確認して続けざまに言う。
「ところでハル、さっきからハルの後ろから私をじーっと見つめている女の子は誰なの?ハルの彼女?」
えっ…。まさか。
僕はそう思ってエミリーが指さした方をちらりと見ると…。
「ガルルルル。」
そこには、物凄い顔でこちらを睨んでいる理奈の姿があった。
こわっ、お前は犬か!
それと僕の陰に隠れてうまい具合に見えてないつもりでもエミリーからは丸見えだということになぜ気づかない。
はぁ…ホント、なんでこうも災いが災いを呼ぶのかな…。
パトラッシュ、僕はもう疲れたよ。
「はぁ…理奈。そこで隠れてないで出てきたらどうなんだ?」
「ひゃぅ、は、晴馬ぁ…」
ひしっ。
そんな効果音が出そうな感じに理奈が僕の腕へと掴む。
おいおい、呼んだだけなのに過剰反応するなよ。こっちが恥ずかしくなるだろ。
と思いつつ、僕は理奈のほうへと手をやり、エミリーに紹介をする。
「紹介する、僕の横にいるのが釘瀬理奈、僕の彼女ということになっている。悪い奴ではないから仲良くしてやってくれ。」
わぁ…自分で自分の彼女を紹介するとか、恥ずかしさの極みなのですが。
僕の紹介文に理奈が顔を真っ赤にして言う。
「ちょっ、その説明!もう…バカバカぁー」
ポコポコと理奈が僕の体をたたく。
正直全く痛くないが、痛がっている素振りでも見せておこうか。
「痛いって。んで、目の前にいるのがエミリー・クトリスト。海外からの留学生で日本語がペラペラ。僕との関係はまあ…一年間だけの友達ってとこかな。」
「ハーイ、理奈ちゃん。明日から一緒の学校だから、よろしくね。と言っても、学校に入るための手続きとかいろいろあるから正式に学校に入るのは来年になるかもだけど。」
「そ、そうなんだ。こ、こちらこそ…よろしく。」
理奈が僕の腕にしがみつきながらボソボソという。
ああ、しまった…理奈は初めてあった人にはこういう態度を取る人だった。
つまりはコミュ障である。
僕もそうなのだけど、理奈とか見ているとまだ、マシだということが分かる。
「とまぁ、そういうことで二人とも仲良くしてくれ。エミリー、中はいるか?」
「うん。まぁ、そのつもりだし。」
「?どういうことだ?」
「まぁ、すぐ分かるよ。」
よしよし、ここまでは何の問題もなく来ている…。
あとはこのままエミリーが何事もなく過ごせば問題ない。
という僕が建てたフラグはすぐに壊されるのがお決まりである。
僕の後ろでものすごくでかい荷物を持った執事(?)のような人が僕の後ろを通っていくのが見えた。
僕はエミリーの肩を掴み、少し低い声を出しながら言う。
「エミリー、どういうことだ?」
「だから、分かるって言ったじゃん。しばらく私、ハルの家でお世話になるから。」
爆弾投下。
死者一名。
死傷者一名。
犯人逮捕。
「えっ。」
「は…はぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」
というまあ、間抜けな叫びをしてしまった。
どうしてこうなったのだろう、皆目見当もつかない。
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