5
「私の最後の光り輝く姿、ちゃんと見ておいて下さいね?」
用紙を挟んだバインダーに目を通していた僕は顔を上げ、ほんの少し顔を曇らせる。
僕らよりも、「からす」よりも、「ひと」よりも、ずっとずっと大きな、優しそうな表情を浮かべたおばぁ星。ただしその光は弱弱しく、今にも消えてしまいそうだ。
彼女に向かって、僕は訊いてみる。
「……消えちゃうのって、怖くないんですか……?」
一瞬の沈黙の後、心に優しい声が響く。
「そんなわけ、ありませんよ。最後まで輝いて、あの星はきれいだねえ、だなんて言われたのならこんなにうれしいことはありませんよ。……では、さようなら」
そう聞こえた時には、すでに彼女は見えなくなっていた。
光を失ってしまったのだ。
目を伏せる。
彼女の名前を見つけだし、大きく×印をつけた。
何故だろう。悲しい気持ちなのに、何故か心が暖かいもので満たされているように感じるのだ。
彼女は……精一杯、輝けたのだろうか。
「……うん」
これくらいのことは、グドバイに訊くまでもなく分かるようになった。
まだ、仲間の力を借りないと跳ぶこともできないけれど……。
一歩ずつ階段を上がっていく。時々、落とし穴がないか確認するために立ち止まるけれど、それでも進み続ける。
その先には、賢い親友と仲間達。
「今日の分、終わりました」
そう言って僕は、お日様に朝を告げた。
オガドーグリと流星群の夜 桜枝 巧 @ouetakumi
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