2
「今日の分、終わりました」
宇宙にぽっかりと浮かぶ階段を上り、その先にいるお日様に「黒色矮星確認用紙」をそっと渡す。
「ん、もう朝か?よし、行ってくるか」
彼女は仲間の分まで紙を集めると、ゆっくりと輝きを増し始めた。
数歩下がって、親友のグドバイにも彼女から離れるよう告げようとしたが、彼はすでに僕より後ろにいた。仕事を始めた彼女は情熱的過ぎて、近づきすぎると熱くて倒れてしまうのだ。
もう少し離れようと、後ろ歩きでまた一歩下がった。
もう一歩、離れるべきかな。
その時、誰かの大きな声が耳に入った。
「オガドーグリ!そこ、誰かがいたずらで落とし穴掘って……」
僕は最後まで聞くことができずに、暗闇へと落ちていく。
気が付くと、僕は何か緑色のチクチクした物の上に仰向けに寝転んでいた。ちょっぴり背中が痛い。
飛び起きて辺りを見回す。
「ん?お前、星の妖精か?」
どこからか声が聞こえる。心の中に響いてくる。少し幼い、男の子の声だ。
「どこ?どこにいるの?僕、どこかに落ちちゃったみたいなんだ」
「そう叫ばなくていい、聞こえている。そもそも君は、私に乗っかっているじゃないか」
僕は首をひねった。どういうこと?
「君は、誰?どうして僕を知っているの?」
「私か?私は地球だ」
彼はそう言った。
地球……地球? 僕はさらに首をかしげる。
地球は僕に構わず、声を響かせた。
「星を見送る妖精のことは、火星から聞いたことがある。しかし、私はまだ若者のつもりなのだが、もうその時なのか?」
言葉の終わりの方で、少し彼の声のトーンが下がる。
……地球、かあ。
確かに物知りな親友、グドバイからそんな星があるとは聞いた。
水の星。緑の星。命の星。
そうか、ここが……地球。
ここで返事を忘れていることに気づき、声を上げる。
「いや、君はまだ若い。大丈夫だよ。僕はただ、落とし穴に引っかかってここまで落ちちゃったんだ」
「それなら良いけど。……最近調子悪くってさ」
安心した声の後、不安そうな言葉が届いた。
どうやら地球は感情が豊かなようだ。
彼はひとつ、ため息のような音を発してから、そういえば、と言う。
「君、仲間の所まで帰れるかい?」
「……やってみる」
緑のチクチクから大きくジャンプし、透明で薄くて小さな羽を広げる。しかし僕は空中に浮かぶことなく、そのまま元の場所に背中を打ち付けてしまった。
痛い。
力が足りないのだ。
もともと僕は落とし穴に気づかないような落ちこぼれ、「妖精力」も仲間から少しずつ分けてもらわないと、飛ぶこともできない。
それでも最近、少しは上達したと思ったのに……まだ、はばたくことすらできない。
「無理みたい。仲間を待つことにするよ。いろいろ教えてくれてありがとう」
僕の落ち込んだ声に、地球は優しく応えてくれた。
「そっか。まあ葉っぱの上だし仲間もすぐに見つけられると思うよ」
そこで僕は初めて、自分が乗っているのが「葉っぱ」だということを知った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます