展
「それで結局前進せず停滞、と。」
「いや、何も無かったというわけではない…。」
僕は現在ある女子生徒と話をしている。誰かというと横溝に僕を紹介したあげく僕の弱味を握らせた張本人である。本当は色々と彼女に抗議をしたかったが抗議したところで倍にして返されるというのは目に見えているのでやめた。そういう隙の無い人格なのだ、園山フシメという存在は。
「いかにも不機嫌そうな顔ですね。」
「当たり前だ、僕は早く家に帰って自堕落生活を送りたいというのに。」
「まぁこの事案が解決したら思う存分その低レベルな生活を満喫して下さいな。
それで?話を元に戻しますと?」
「彼女が話さないならこっちが勝手に知るまでだ、てことで独自に調査をさせて貰った。横溝の生活環境に至る隅々までな。…ちょっと待って、何で110番にかけようとしてるの。」
「犯罪者は警察に突き出さないと、と思いまして。」
「真顔で今更そんな事言うのかよ!?」
「冗談ですよ。」
「もう少し冗談みたいな表情してくれ…。それで調査の結果だが、
原因となる事があり過ぎたんだよ。思わず苦笑いした、こんな息も詰まる環境の中で生活を送っている女子高生もいるのかってね。さながら可哀想なヒロインだ。彼女は学校での対人関係や家族関係までどこにおいても何かしらいざこざがあった。」
彼女の家は農家でここら辺では有名な血筋だ、そこで両親の婿養子を受け入れて家を継いで欲しいという願望と彼女自身の意志との衝突が長年続いているらしい。それに加え学校でも強気な性格のせいで教師や同級生と揉め事をちらほら起こしていた。その割に学校でそこまで有名でないのはクラスでは静かに大人しく振舞っているからなのか。
解決する鍵となりそうな事があり過ぎて逆にどれをはめれば外せるのか分からない。なるほど、彼女が分からないと言った真意がようやく分かった。
「手がかりが一つも無いのも困りますが、あり過ぎてもどれが当たりか分からなくて困りますね。でも、わざわざ一つずつ調べるのは些か頭が悪いですよ。」
「?どういう事だよ。」
「確かに彼女を取り巻く環境は過酷だ。それでも彼女は今までその環境に身を置いてきた、そんな強固な精神を持つ彼女が今更一つの重が乗っかったくらいで潰れるでしょうか。つまり原因は彼女にのしかかっている負担ではなく
膨大な負担を支えていた何かの崩壊です。」
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