承
脅迫の内容?そんな大した事じゃない、ただ僕が女子更衣室で××してしまった事や、学校の備品を〇〇してしまったりと。
僕は脅迫内容に怖気づいて易々と従うハメになったがあの件についてはバラされたら反省文どころか停学になってもおかしくない…。
「この町にこんな田舎っぽいとこあったんだな。」
「まぁ私達の学校は市の中心にあるから地元に住んでなきゃ知らないだろうね。」
彼女は毎日この田圃道を通って学校に登下校しているらしい。辺り一面の青い稲を心地よい風が撫でている。
「両端の用水路が結構深いからよく落ちたりしたんだよね。
あぁ、そんな事どうでもいいわね。分かってるわよ安心して、もうすぐよ。」
もうすぐ?
青々とした絨毯を照り付けていた夕陽が丁度山に隠されようとしたその時、
駆け抜けるような風が顔を打ち付けた。
「ほら、これが私の怪奇現象だよ。」
なにが、と言いかけて僕は口を噤んだ、視線を落としたその先には足首ぐらいの高さまでの水に浸かった僕の足があった。
余りにも突然で、自然すぎた。水はあたり一面を覆い水平を保っている。
もちろん最初っから水に浸かっていて気付かなかったなんて事はない、つまり水は勝手にどこからともなく発生した。
「私も最初はびっくりした、自分の目や足の感覚を疑ったわ。日が沈む時だけこうなるの。」
この水はいったい何なのかしらね。
彼女はチャプチャプと足で水を蹴りながら呟いた。
明朝に同じ場所を見に行ってみたが何事もなかったかのようにさっぱり水は消えていて、周辺の住人にそれとなくこの奇異な現象について聞いてみたが誰もが首を傾げるばかりだった。
「原因は二つに分けられる、モノが勝手に引き起こす場合か、人自身が起因となっている場合かだ。君にしか現象が起きていない辺り僕は後者と考えている、
…思ったより無反応だけど、もともと表情が乏しいキャラ?それとも何か心当たりでもあったのかな?」
「そんな遠回しにせず率直に聞きなさいよ気持ち悪い。
…ちょっと何でしゅんとしてるわけ!?もしかして傷ついてる?今の私の言葉で?」
「いや、傷ついてなんかないさ。キモいとか言われて傷つく程豆腐メンタルじゃないよ、うん。でももう少し言葉選んでくれてもいいじゃん?」
「こいつめんどくせぇ。」
「心の声が漏れてるよ横溝。」
眉間にしわを寄せて心底嫌そうな顔をされた。そんな顔をされたら鋼メンタルの僕でもちょっとばかし傷つくかもしれない。
「心当たりかぁ。」
「何でもいいよ、あなたの心の内に秘めているお悩み事まで何でも聞いて差し上げますよ。」
ドカッ、スネを蹴られた。
「…はぁ、本当に君みたいなやつが解決してくれるのかしら。ていうか、原因が分からないから私は君を頼ってるんだけど。」
「えぇ…無茶苦茶な…。とりあえず何でもいいから教えてくれよ。」
「…。」
彼女は黙ったままどこか複雑そうな表情で僕の顔を見つめている。
もう遅いから今日は帰ろうか。という僕の一言でこの沈黙は結局破れた。
彼女の隠している彼女を僕は見つけに行かなければならないらしい。
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