真夏の水平線

@gyunyu580

「単刀直入に言うけど、怪奇現象を解決してほしいんだ。」


それが彼女と僕の初めてのちゃんとした会話だった。

確か名字は横溝だったか…。

僕の机に手を置き見下ろす彼女黒髪は三つ編みで、午後の夏の日差しを反射していた。間近で見ると顔はそこそこ整っていて可愛い。まぁ今までちゃんと彼女の顔を見た事なんて無かったからな。

僕と彼女とのクラスでの関係はそんなものだった、そいえばクラスにこんなやついたなっていうレベル。

教室には二人分の影しかなく全開にした窓からぬるい風とけたたましい蝉の声が二人の間に流れ込んでくる。

授業も終わり、さて部活なんぞに精を出している輩を横目にスタコラと帰宅しようとしていたところを話しかけられたので、僕は少しの間沈黙してしまった。


「あれ…もしかして間違ってた?知り合いの女の子から紹介されたのが君だったんだけど。」


「いや、確かに一般人と比べると詳しいかもしれないが…。」


「まぁ、合ってようが無かろうが別にどっちだっていいのよ。君は私に協力するしかないんだから。」


だから私の話をさっさと聞け。と彼女の目が言っている。僕は彼女には貧弱に見えているのだろうか、ここは一つクラスでは少し物静かで周りの意見に合わせるような弱々しいやつというイメージであろう僕が意外と強気なやつ、という事をアピールするしかないらしい。


「僕は貴女に貸しなんてないし、協力する理由は"クラスメイト"という弱い繋がりしかない筈だけど。僕はタダで人助けをする善良な主人公じゃないんだ、働きにはそれなりの報酬がないと。」


言い切った、よし。よくぞ頑張った僕。

しかし彼女は僕のアピールを踏み倒すかのように、如何にも楽しそうに、ニヤリと微笑んでいた。


「報酬?さっきも言ったでしょ、君は私にって。」


前述にもある様に僕と彼女は会話らしい会話はこれが初めてで関係は無に等しかった筈、そこから僕の立場を下に下げるのだというのだから、


「…まさか脅迫でもする気?」


「ピンポンピンポーン♪」


ご名答!とでも言いたげに彼女はニヤリと笑ったのだった。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る