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その後、直ぐに青年が出てきた。



まるで彼女に追い出されたかと思わせるようなタイミングで。



「…ふう…」


「…どうかしたんですか?」



出てきて早々ため息を吐いた青年に女の人が尋ねる。



「…いや、どうやって彼女の機嫌を元に戻そうか…と思ってな…」



青年は難しそうな顔をしながら返す。



「…怒ってる、という感じでは無かったですよ?」


「…そうだな、怒ってると言うよりも…」



完全に興味を失っているように思う…と青年が女の人の言葉に同意しつつ呟いた。



「…?どういう事ですか?」


「つまり、俺という人間が彼女の中で眼中に無い状態になった…という事だろう」



女の人が聞くと青年が少し悲しそうに言う。



「…どうでも良くなった、という事ですか?…でもそんなのいつもの事じゃ…」



女の人は青年をフォローしようとしながらも躊躇いがちに呟く。



「…『どうでもいい』と『興味が無い』は似てるようで違う」


「?」



青年がそう告げると女の人は意味を図りかねたのか首を傾げる。



「どうでもいい、は存在を認めているが興味を持てない事で…興味が無い、はそもそも何が起ころうとどうでもいい事だ」


「??なにか違うんですか?」



青年の説明を理解出来なかったのか女の人は逆向きに首を傾げた。



「…どうでもいい、は彼女の中に俺の存在があるが興味が無い、は彼女の中の俺が消えたと言う事だ」


「…つまり、存在が忘れさられた…?」



青年の補足のような説明に女の人は自分なりの解釈を疑問系で返す。

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