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「果物は木だし接ぎ木で増やせるからいいとして、やっぱり炭水化物系の穀物系を増やした方が良いかと思ってるんだけど…」


「ち、ちょっと待ってくれ、これ以上選択肢を増やされると…!」



彼女が育てる植物の種類を話すと男が焦ったように制止した。



「えー?選択肢はまだまだあるよ?穀物か野菜か、穀物系にするなら何を多めに育てるか、野菜系にするならどの種類にするか…とか」


「…の、農業ってそんなに奥が深いのか…」



不満そうに言う彼女に男は呆然とした様子で呟く。



「いや、今はかなり浅い方だと思うけど?ただ選択肢が多いだけで」



その呟きを否定するように彼女が聞き返す。



「…すまない、どうやら俺では君の力にはなれないようだ…」


「うん、分かってた」



悔しそうに椅子から立ち上がった男に彼女はバッサリと言い放つ。



「…っ…!…くぅ…!」



その言葉に無力感が出たのか男は泣きそうになって走って家の中から出て行く。



「な、なにかあったのか…?」



少しして青年が様子を伺うように控え目にドアを開けて聞いてくる。



「…なんで?」


「いや…なんかアイツが泣きそうな顔で走って行ったから…」



彼女が聞き返すと青年は心配したように言う



「別に何も無いけど…しいて言えば考えてる事を話しただけだし」


「…そ、そうか…」



青年は彼女の返答を聞いてどっちの意味でか分からないが、ホッと胸を撫で下ろした様子だった。



「…気になるんならあんたも聞く?」



アイツだけじゃ不公平だしね…と彼女が提案する。



「い、いや…今回は遠慮しておく…」


「そう?まああんた達には期待してないからどうでもいいけど」



青年の辞退に彼女は興味無さそうに返してまた目を瞑って考え始めた。

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