34
「料理にしろ、剣や槍、弓や魔法にしろ、技術が必要なのは努力して磨かないと身に付かないのは一緒だろう?」
天才も凡人も努力しないと技術は身に付かねぇよ…と言って彼女は一旦ボウルから下りる。
「…その通りだ」
彼女の意見に男は意外そうに呟く。
「でも魔道書ってのが読むだけで魔術を身に付ける事を出来るのなら…まあ勘違いされても仕方ない」
魔道書と魔導書の違いなんて専門外の人には分からんし…と彼女は生地をひっくり返してビニールを敷いてからまた踏み始めた。
「っと…あんた、野菜と魚介と肉類どれがいい?」
彼女は生地を踏みながら思い出したように、何かを言おうとして口を噤む男に聞く。
「…そうだな、魚介が美味そうだから魚介で」
「んじゃまあ…魚介スープか」
考え込むように腕を組んで生地を踏む彼女が何かを決めたのか、踏むのを止めて冷蔵庫を開ける。
「おっ、スープ用のはまだ残ってるな…刺身を炙って具材にするのも良いかな?」
昼の料理の事を考えながらブツブツ呟いて大きめの鍋に水を溜め始めた。
「…昆布とかつお節と魚の骨で出汁をとって…そしたら麺もちょいと味を変えた方が…」
水の溜まった鍋をコンロに乗せて火を点けると大きなボウルの中にある生地を少し千切り、別の小さいボウルに移す。
「何でいこうかなー?」
彼女は調味料の入った小瓶を集めると一つ一つ指差し確認しながら迷う。
「…かみさまの、いうとおり…っと…」
目を瞑って何かを呟きながら両手の人差し指を動かし始める。
「きーまり、っと」
選んだ調味料を手に取ると小さいボウルの中に少量入れ、手で生地を捏ねた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます