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「…鬱陶しいか?」
「うん」
男の問いに彼女はきっぱりと言い切る。
「…そうか、すまなかった…じゃあ俺は小屋の所で待っておく事にしよう」
男は謝るとすぐさま踵を返して家に戻って行った。
「…なんで山から出ていかないんだよ…」
後ろを向いて家の方に歩いていく男を見た彼女がため息と共に呟く。
「さて、そろそろ収穫できそうな物は…っと…」
一人で畑についた彼女は水を撒きながら野菜、穀物、果実類と見て回る。
「ふ~んふ~ん♪ららら~♪」
彼女は鼻歌や口ずさみながら袋から取り出したザルに収穫した野菜等を入れていった。
「あ、そろそろ精米しないと…明日か明後日には雨が降りそう…」
何かを思い出した彼女は収穫を急いで済ませ走って小屋に戻る。
「おお、おかえり」
「ちょうどいい、手伝って」
家の中で本を読んでいた男が振り返ると彼女はテーブルにザルを置いて手伝いを要請した。
「おお!俺に出来る事ならなんでもやるぞ!」
「…んじゃコレ、回して」
別の部屋からガラガラ…とキャスター付きの機械のような何かを運んで来た彼女がハンドルを指差す。
「コレを?こうか?」
男は不思議そうにハンドルを掴んでグルグルと回していく。
「うん、そんな感じ…ちょっと待ってて…」
彼女は男の手際を見て適当に流すと外に出る。
「よいしょ、っと…コレを上から流していくから、ずっと回しててね」
ドアを外してリアカーのような一輪車を家の中に入れた彼女は、スコップのような物で山積みになってる穀物を掬う。
「…なんだソレは…?」
「頴果…ここではペイかな?とりあえず穀物」
男の不思議そうな問いに彼女は疑問系で答えた。
「ペイ…?ああ、アレか!…なるほど、加工される前のは初めて見たな…」
「…よし、じゃあ始めるよ」
思い出して納得したように呟く男を無視して彼女は機械の下にタライを二つ並べて準備を終える。
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