30
「?そのタライは?」
「回したら分かるよ」
男の疑問に穀物をスコップで掬って機械の上の方に入れながら彼女が言う。
「ふむ……っ!下と斜め下から何か落ちてるぞ!」
「下に落ちるのが不必要な殻で、斜め下に落ちてるのが精米だよ」
まあ脱穀や精米なんてしないそのままの物でも蒸せば食えるけど…と彼女は説明した。
「脱穀?精米…?」
「美味しくするための工夫、喋らないでもっと早く回して」
首を傾げながら聞いてくる男に答えはしたが彼女は作業を急がせる。
「っく…!コレは、いったい、いつまで…!」
10分後。
ずっとハンドルを回している男は苦しそうに彼女に問う。
「これ全部無くなるまで」
「なっ…!?」
彼女はリアカーのような一輪車に入ってる穀物を指差して答えると、まだ1/4も減っていない量を見て男が絶句した。
「本来なら一週間かけてやるんだけど…まあ頑張って?」
ザラザラ…と機械にどんどん穀物を入れながら他人事のように彼女が首を傾げる。
「ぐっ…くっ…!」
男は額に汗を浮かべながら右手左手…と左右の手を交互に変えながら回す。
「はいちょっと休憩~」
「ふうっ!はぁ…はぁ…」
穀物の山が半分に減り、精米されたコメがタライいっぱい溜まると彼女が一旦作業を止めた。
彼女は二つのタライをズラして布を被せるとコメが入ってる方のタライを紐で縛る。
「んじゃあ第二回戦といこうか」
「…もう、か?」
新しいタライを二つ設置して作業再開を告げると男は顔を歪めた。
「嫌なら外で遊んできていいよ」
「…いや、やろう」
彼女が選択肢を与えたにも関わらず男は結局ハンドルを回すという作業を再開する。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます