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「グルル…!」



30分ほど山菜取りをしながら進むと…血だらけの魔物を発見。



臥せったまま威嚇するように唸っている。



「!?コイツは…!まだ生きていたのか…!」



青年は魔物を見るや否や剣を抜く。



「ストーップ!」



魔物に斬りかかろうと走り出した青年を止めるように彼女が叫ぶ。



「…なっ…!?」



出鼻を挫かれたからか青年はコケそうなり、なんとか体勢を整えた。



「怪我してるじゃん…スキル『料理』」


「っ…!?君は正気か!?」



彼女が袋からフライパンを取り出すと青年が焦ったように詰め寄る。



「何かあっても守ってくれるんでしょ?」


「いや…そうだが…でも…!」


「大丈夫だって、一回だけだから…ソレにもし傷付いてもまた料理で回復させてやる」


「~~!!…とても、君が正気の沙汰だとは思えない…」



一応彼女に負けたのか青年は盾になるように前に立つ。



「…炒め物だと危ないから…揚げ物かな?フライパンスキル『瞬間加熱』」



袋からビンを取り出すと中の液体をフライパンに注ぎ入れてからスキルを唱えた。



「ちょっとコレ持ってて」


「君は本気であの魔物を癒すつもりか?」



小さいボウルを渡すと未だに説得するような事を青年が言う。



「相手が誰でも、何でも…等しくチャンスは一回、与えるべきだ」



流石に二回目は無いけどね…と呟いて彼女はボウルに山菜を入れて、袋から出した粉を塗す。



「…っと、危ないから離れて」



青年を手で退けて熱した油の中に粉を塗した山菜を全部入れて揚げていく。



「良い色…はいよー」



彼女は網で小麦色になった山菜を掬い、油を切って魔物にポイッと投げる。



「グルル…………ッ!?」



魔物は投げられた山菜のかき揚げを警戒したように匂いを嗅ぐ。



最初はソッポ向いたが…やはり気になったのか…



数秒して一つ食べ始めた。



そして美味しかったのか2つ、3つ…と結局投げられた全てを食べ切る。



すると魔物の身体を緑色の光が包み…



HPが回復して体力ゲージが赤から黄色になった。



「コレで襲って来たら君は大馬鹿者だ…」



彼女は青年の責めるような視線と言葉を無視してスキルを使いフライパンの油や網、ボウルなど片付ける。

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