第7話
今日は、アイツに会いに行く日。きっと、病院に行くんだろうな。アイツ、病室に入れないくせに、何でそんなに病院にこだわるんだろ。アイツが考えてること、思ってること、想像がつかない。アイツにしては、俺らが考えてることが、分かんないんだろうな。アイツの見てる世界は俺が見てる世界とどんだけ変わってるんだろう。アイツの世界観に触れてみたいな。どうやったら触れられるだろう。探しとこ。ある程度必要な荷物を持って、電車に乗る。ガタガタ揺らされながら、外を眺める。アイツの住んでる場所は、すっごく自然がいっぱいなとこ。毎朝早く起きて、電車に乗って学校に通ってるらしい。学校が遠いから不便らしい。でも、近くに同じ学校の生徒がいないことは、楽かもね。自分のことがあまり知られないから。良いなぁ。俺の家なんか住宅地だから、同じ学校だった奴とか、同じ学校の奴とかとよく出会う。何か見られてる感じがあって、息苦しいだよね。外に出ると。良いなぁ。アイツの環境にますます憧れるよ。アイツと変わりたい。電車を降り、トボトボと道を歩く。周りには誰もいない。だって、森の中だもん。アイツの家は隠れ家みたいに森の奥にある。しかも、家のデザインが独特。森の中に紛れ込むようなデザインで、一見小さく見えるが、アイツの家は壁全部が本棚になっていて、沢山の本が敷き詰められている。まだ全部は埋まっていないそうだ。玄関から入るとまず、大きなテーブルと、2つのアンティーク調のイス。この椅子は、クッションがとても気持ちいから、お尻が痛くならない。その奥に行くと、キッチンがある。キッチンは全く使った気配がない。アイツ曰く、ちゃんと使っているそうだ。キッチンを出て、左に向かうと階段がある。2階には、アイツとアイツの母親、父親の部屋がある。そして、風呂やトイレ、洗面所もある。さっき登ってきた階段をまた登ると、螺旋階段のようになっている。階段を登り着ると、屋根裏部屋に着く。屋根裏部屋は、全部の壁が本棚になっている。まだ俺は入ったことがないけれど、アイツ曰く、古い本が沢山あるらしい。他に屋根裏部屋には、季節ごとのカーテンや服、家具が置いてあるらしい。屋根裏部屋には、本が痛むから窓はあるけれど、いつも分厚い黒のカーテンで日光を遮っている。アイツ曰く、屋根裏部屋は天国らしい。暗いし、涼しいし、本は沢山あるし、アイツのお気に入りの場所らしい。でも、俺はもっとすごい部屋を知っている。それは、アイツの部屋。アイツの部屋は、本棚の壁はないが、本が沢山積まれている山がある。小さな本棚が5つあるが、それだけでは足りないようで、本棚の上に積まれている。しかも、2つの本棚の上は、本の山がアイツの身長の最大の高さまで積まれていて、今は3つ目の本棚の上に山を作り始めている。部屋に入って目に入るのがその本棚と本の山。他には、特徴がない気がする。古い机と古いイス。古いクローゼットに、座り心地のいい1人掛けのソファー。全て黒か黄緑色でまとめられている。本は除いて。アイツの部屋には大きな出窓がある。アイツが大きな出窓の前のスペースに座り、本を読んでいる姿をよく見かける。時々、そこで絵を書いている。アイツは風景画をよく書く。出窓からの風景が多いが、時々外に出て書いている時もある。アイツはまず鉛筆である程度の線を書いて、家に帰って色鉛筆で色付けをしている。よくアイツの絵を見せてもらうが、アイツの絵はすごく上手だ。写真のようなリアル感がある。どうやったらそんな絵がかけるのか聞いてみたが、アイツは何も教えてくれなかった。多分、自分でなんとかなることなのだろう。私を頼るなと言いたいのだろう。アイツの家のことで色んなことを思い出しているうちに、アイツの家に着いた。インターホンが無いため、ドアノッカーを叩く。しばらく待つと、アイツが迎えてくれた。家の中に入り、アイツと話をして計画を立てる。やはり今日も病院に行くことになった。アイツはもう出かける準備を済ませており、少しだけ休憩をして、また、出発することになった。アイツは今何を思っているのだろうか?もしかして、“過去の私になにか言えたなら”だったりして。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます