第4話

俺は、どうしてもやり直したい過去がある。その過去さえなんとかできれば、救えた人が何人かいる。あの時に、アイツに声を掛けていれば、アイツに頼られるような存在でいれば、あいつが心を開けるような人間で居れば、一度思い出すと後悔の気持ちばっかり、湧き出てくる。何で人間は今しか生きることが出来ないのだろう。自由に時間を行き来出来れば、アイツの肩の荷も軽く出来るはずなのに。何で、今の俺じゃそんなことが出来ないんだろ。何でそんなに役立たずなんだろ。多分アイツ今、ずっと自分を責めてるんだろうな。アイツが悪いわけじゃない。本当のことを言えば、アイツにあの決断をさせた大人が悪い。なのに、大人達はアイツを捨てた。母親でさえも。アイツが起こしたことで、アイツの父方の家系、俺がアイツと繋がっている家系は微妙な空気が、漂っている。何で小さかったアイツに全部を背負わせるんだろ。普通、大人が責任を取るはずなのに。何でアイツは嫌われるんだろ。同い年の俺と、アイツの扱い方はいつも違った。親戚で集まると、俺は歓迎させてもらって、沢山の暖かい目で見られる。でも、アイツはあまり歓迎されなくて、冷たい目で見られてた。大人の皆がアイツを空気のように扱って、嫌っていた。親戚の集まりには、アイツの母親はいつも来なかった。アイツは父親に連れられて集まりに参加していた。いつも無表情だった。色んな話が盛り上がる中、アイツは必要じゃない限り動かなかった。あまりにも動かなかったから、一瞬、上手に出来すぎた蠟人形がと思った。アイツの父親は親戚から好かれていた。でも、アイツだけは嫌われていた。大人の事情らしいけど、何が原因でこうなるのかさっぱりだ。でも、2つだけ思うことがある。1つ目は、

“あんな大人なんかになりたくない”。

もう1つは、“過去の俺になにか言えたなら”

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