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夏は暑い。それでも、体力を余らせている小学生は、外へ駆け出さずにはいられないのだ。
今となっては、クーラーのかかった部屋でごろごろしている夏のほうが有意義だと感じるが、その頃の私はというと家にこもってゲームなんかをするよりも毎日外に出て友人らと遊んでいたほうが楽しかったのだ。野球の少年団に所属していた影響もあるだろう。夏だろうと何だろうと関係なく練習があり、レベルアップのため自主練も行いととても精力的な日々を送っていた。あの頃はまだ、体を動かしたくらいで節々が痛くなることなどなかったのだ。歳をとって体を動かさなくなると筋肉痛が遅れてやってくるという話をよく聞くが、そもそも筋肉痛なんてものが、存在していなかった。
その日も練習があった。これからまだまだ暑くあるだろうということを痛感させられる夏の入り口ともいえる日だった。
練習が終了した後も動き足らない若い私たちは、場所を小学校のグラウンドから自宅付近の公園へと移し自主練を行っていた。練習内容としては、長い距離でのキャッチボールやトスバッティング、チームのキャプテンである彰が考えたバドミントンのシャトルをバットで打つという練習。いつも通りのメニューだった。シャトルって案外打ちにくいんですよ。ふんわり投げられるとあっさり軌道が変わってしまって。
練習の終わった十二時から一度帰宅し、昼食を食べたのちに再び集合。それからの練習で気がつけば、日が暮れようとしていた。というかもうほとんど沈んでいた。流石に休憩をしようという流れになった。そこでやはり、小学生らしさが出ていた。ベンチがあるというのに地べたに寝転ぶのだ。私は知っている。寝ころんだ後に起き上がるのがどれだけつらいのかということを。
寝転んで紫色の空を眺める。星はあまり見えなかった。
公園に一番近い、というか公園の目の前に家のある彰は一旦帰り、アイスを片手に公園に戻ってきた。彰が、「ほい、これ母さんが陸にだってさ」といいながらアイスを渡してくれた。短く礼を返そうとしたが、それよりも先に彰が言葉をつつけた。
「今日、水戸で花火だってさ」
水戸、というのは私たちの住む町の川向こうにある街だ。一応、我が県の県庁所在地ということになっている。そこで花火大会があるということを彰は端的に告げていた。
私が、「それで? 」の言葉を出すよりも先にまた、彰が口を開いた。
「見に行かね? 」
「は? 」
彰は、彼らしい無邪気な顔をしていた。
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