夢の中の体験談
海
夢の中のおじいちゃん。
これからする話は、僕が実際に体験した夢の話だ。
僕の小さい頃、大好きだったじいちゃんが死んだ。病名は教えてもらえなかったけど、確かガンと間違いやすいものだったと聞いた。最初は病院で治療していたんだけど、最後は自宅でなくなったんだ。
じいちゃんの葬式では皆が泣いていた。じいちゃんは結構、人脈が広かったらしいんだ。皆泣いてたよ、ホントに僕以外の皆。僕はまだ幼くてね、遊ぶ人がいなくなってしまった。くらいにしか思わなかったよ。結局僕は泣かずに、じいちゃんが横たわる布団の横にぼぅっと立っていた。
それから数年たって、おばあちゃんも皆もじいちゃんのいない暮らしに慣れてきた。僕もじいちゃんとの記憶の大半がもう忘れてて、平凡な日々を過ごしていた。
そんなある日、夜に夢をみたんだ。目を覚ましたらじいちゃんの家で最初は驚いた。寝たときは自宅の自分のベットで寝ていたと思う。最後の記憶はそこで終わっているからね。最近はじいちゃんの家にあまり行っていないから何故ここにいるのか分からなかった。
まぁ、直ぐに夢だと気づいたよ。最後の記憶は僕の寝室のベットだったしね。なんだっけ、意識があって体が自分で動かせる特別な夢、夢を見るとき、僕は意識が毎回あるからあまり驚かなかったけれど、自分で体を動かしたのは初めてだったからテンションが上がっていたな。
だけど、同時に凄く怖かった。意識があって自分の意思で体が動かせる夢、そういう夢の最初は悪夢になる。と、親しい友人に教えてもらったことが僕にはあった。僕はホラー系が全くもって駄目だっからまぁ、怖かったよ。だって簡単に作られたお化け屋敷さえも泣いてしまうくらいのビビりだからね。
この家は築百年でかなり古く、何か出てくる。そういう感じだった。僕が起きた時にはじいちゃんの家の居間にいてね、どうしても外を見に行く勇者的行動は出来なかったね。
それに、時間は現実と同じなのか窓から見たときの外は闇が広がっていた。
星も雲も、小さな明かりさえもなくマジックで塗りつぶされたかのように完璧な黒一色だった。
怖くなりだして早く目を覚ませないかと思った。最初のテンションなんてもう綺麗に消え失せてたよ。でも、夢から目を覚ます方法なんて自分じゃ分からなくて涙目で玄関の方に向かったさ。まぁ、分かっていたとしても怖くて出来なかったと思う。
雨漏りしているのか天井から床にピチャン、と雫が落ちる。その音が夢の中にも関わらず僕の鼓膜を揺すり響いた。その音が僕の恐怖を助長する。
「なっちゃん。」
「ひっ・・・・・うおっ!?!!」
声が聞こえた。僕の世界では僕しかいないと思ったのにね。
今まで思い出せずにいたのにその人だと何故か分かった。嘘だ、だってだって可笑しいじゃないか。
目の前には僕が昔、好きだった人の大きな体。長ズボンに半袖シャツ。意外とラフな格好で驚く。
だけど、そこから見える肌は病的なまでに青白く、パサついていた。
「じ・・・・・い・・ちゃ・・ん。」
死んだ筈のじいちゃん。
入り口を塞ぐような形で僕の前に立つじいちゃん。その顔には薄く笑みをたたえて僕を見下ろしている。昔と変わらない笑み。だけど今はとても冷たく思えた。冷たい、冷たい笑み。それを見た瞬間、ドッと冷や汗が僕の体から出る。背中にじめっとした冷たい液体がつたう。
「あ、あぁ、あぁぁぁぁぁ!!!?」
動物的本能とでも言えばいいのかな、危ないって直感で思った。足が恐怖でガタガタと震えた。それでも後ろを向いて居間に走り出す。
だけど、それは叶わない。
ガッと強く腕が引かれる。腕が強く掴まれて痛みが走る。掴んだのは多分じいちゃんだ。怖くて後ろを見ることが出来ないけれどわかる。腕からじいちゃんの冷たい体温が僕の体に乗り移っていく。
嫌だ、危ない!
恐怖でガタガタ震え、動けない僕にじいちゃんは優しくこう呟いたんだ。そこからはあまり覚えていない。
「一緒に逝こう?」
×××××
あの夢は何だったのだろうか?結局じいちゃんが何がしたかったのか、あれからどうやって助かったのか分からないままなんだ。
今考えると僕はあの頃、実は現実が怖くて仕方なかった。人間の愛情が信じられなくて死にたいとか考えることもあったんだ。今考えると、
じいちゃんは僕の願いを叶えようとしたのかもね。
僕は今でもじいちゃんが大好きです。
夢の中の体験談 海 @Kaisan
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