第7話 人を食った奴等
年金という詐欺制度が、この超高齢化社会にまだ生き残っていること自体が奇跡である。
それを食い物にしてきた悪の組織が脈々と受け継がれてきている事は、更に奇跡といえた。
確かに――しぶとさ。図太さ。
「なんですか? あの『N国N金機構』が今更、何の役に立つというんですか?」
あまりに突拍子もない提案に、思わず総理机を叩いてしまった。
「まぁまぁ! 興奮しないで私の話を聞きなさい」
さっきまで怒り狂っていた総理が、今度はなだめ役にまわっている。
「そうは言っても総理。あなたは、あそこに働いている奴らを知っていますか?」
「大体は聞いているが。私は厚R大臣だったから……あまりアソコには……」
「私は、あなたの下で、吉田さんと何度も視察に行きましたから」
「そう言えば、吉田大臣と、大杉君は一緒の働いた時期があったと聞いたが……」
「あなたの下で働いていましたよ。それも忘れたんですか?」
これが、歳を重ねるという事である。
「とにかく、あの組織の人間は『いつまで
官房長官が一気にまくし立てた。
『N国N金機構』に一方ならぬ恨みがあるようだ。シワから湯気が吹き出している。
地球規模で言えば、クレパスから高く水蒸気を噴き上げる間欠泉のようである。
しかし実際には、肛門から吹き出すオナラにしか見えない。
「まぁ、落ち着きなさい……大杉君」
「しかし……」
「君が言う通りの組織だよ。だから、そこに目を付けたのだ」
「どういう意味ですか?」
総理の鼻にもシワが寄って来た。
満面の笑顔である。
「それは……あそこで働いていた者は、昔から『人を食い慣れている』からさ」
「……人を食った事がある? あいつ等がですか?」
なんだか、嫌な予感が脳裏を横切る官房長官である。
総理の鼻にシワが寄った笑みには気を付けろという、先代総理の忠言を思い出した。
「そうさ。さっき大杉君も言っただろう。どんな不祥事を犯しても、いつも変わらないひょうひょうとした態度」
「確かに……それが、何か……これと関係が?」
(分からなかなぁー)と言いたげな総理の顔を見ていた大杉官房長官は、ハタと気づいたのか、両手の掌を《ポン!》と叩いた。
「分かりましたよ。どんなチョンボをしても『
「大正解! ほらね『人を食っていた』だろ?」
「確かに、それは面白いかも……あっ!」
大杉官房長官の予感が的中した。
それに乗っかってしまった、自分の軽率な言葉を後悔しても手遅れだった。
「覆水盆に返らず」である。
「腹水で盆に帰れず」といった父親の言葉を思い出すのにさしたる時間はかからなかった。
遅ればせながら――DEBU省と看板を付け替えるのは――
厚R省とN国N金機構に決定した。
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