9 宣言

 感触がある 冷たい 濡れている

 光 夜 銀 黒

 アスファルト サーチライト

 違うか、ああ、ただの街灯

 洩れてくる光が歪んでいる

 わたしに届かない/わたしに届く

 心の中を覗く

 いない/いる

 だあれ、あなたは……


 自分で作った世界に逃げ込む

 他人が作った世界で溺れる


 身体が毀れる 腕が割れる 脚が砕ける

 でも本当に恐いのは、知っている/知らない

 だあれ、あなたは……


 濃くなっていく 形が止まる

 薄くなっていく 周りが消える


 表面から/内側から

 あなたが凍り、わたしが溶ける

 だんだんと消えていく

 ああ、もう傷つけた人の名前さえ思い出せない

 ああ、もう愛された人の笑顔さえ思い出せない

 キラキラと七色に輝いてキレイ

 油膜プリズムの反射が強過ぎて

 わたしがどんどん溶け出して/薄くなって/消えて

 代わりに現れる

 だあれ、あなたは……


 独り 一人 独り 一人

 世界の中で

 独り 一人 独り 一人

 世界の外で


 諍いがある 儚く 病んでいる

 灯(あかり) 夏 灰 赤

 インフェルノ コンクリート

 混乱、ああ、ただの絶望

 沈みゆく心が撓んでいる

 あなたに届かない/あなたに届く

 闇の襞を食べる

 生きる/死ぬ

 だあれ、あなたは……


 自分で作ったベールに彩色

 他人が作ったベールを断裁


 秩序が毀れる 街が割れる 川が砕ける。

 でも風景は無視できる、知っている/知らない

 だあれ、あなたは……


 色づいてくる 内部が止まる。

 色づいてくる 外部が消える。


 底辺から/頂点から

 世界が凍り、自然が溶ける

 だんだんと枯れていく。

 ああ、もう流された他人(ひと)の名前さえ形を崩す

 ああ、もう殺された他人(ひと)の笑顔さえ形を崩す

 どんよりと鈍色が通過して終わり

 街に溢れ出す狂気が強過ぎて。

 すべてがどんどん溶け出して/薄くなって/消えて

 代わりに現れる

 だあれ、あなたは……


 独り 一人 独り 一人

 孤独の中で

 独り 一人 独り 一人

 孤独の外で


 救えるものなら救ってみてよ

 助けてなんて言わない

 この色の消えた世界の何処かで

 あなたを待ちはしない


 直せるものなら直してみてよ

 忘れて構わないから

 この罪に満ちた世界の何処かで

 わたしは死にはしない

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