森の謎の虫&謎の魔獣にご用心 後編
「はぁ?虫に寄生されていた?」
「そう、これがベルティーナの頭の中にな。ワタシも図鑑で見たことがない虫だ」
そう言うとデトラはテーブルの真ん中にペトリ皿を置く、そこには縦1cm横1mmで動き回る小さな白い虫がいた。
「じゃ、じゃあ俺に色々やってきたあの行動は・・・?」
するとベルティーナはまた少し泣きそうになりながら口を開いた。
「も、申し訳ないです・・・多分それも虫のせいです・・・」
「ぐああああああああああ!!!」
「あら~兄ちゃん残念だったな」
「う、うるせえ・・・!」
俺は右手で頭を押さえて天井に向けてうめき声を上げる。あれは好意でもなんでもなく虫のせいだったのか・・・いや、助かってくれて嬉しいんだがなんというか・・・。
「・・・けどそんな虫が頭の中にいたとは、よく気がついたな姉ちゃん」
「ワタシにかかればこんなものアサメシマエ―――いや、というかおかしいところしかなかっただろ?」
「まぁ―――仲間が死んでるのに他人に求婚とか頭おかしいよな」
「う、うぅ・・・」
「ベルちゃんほら、ここにタオルあるぜ」
「あ、ありがとうございます泥鴉さん」
ベルティーナはそう言うと泥鴉に差し出されたタオルを手に取り、また目からあふれてきた涙を拭き取った。まあそりゃ自分の意志でやったわけじゃないけど自分の体であんなことされたらねぇ・・・俺だって自分の意志じゃなくても全裸になって歩き回るのは嫌だし。
「えっと、それでさっき”次やること”って言ってたけどあれって何だったんだ?あとこれに用があるって言ってたこともだ」
「ワタシはベルティーナの住んでいる集落に行きたいんだ、そこでこの謎の虫のことや謎の魔獣のことを調べたい。と、いうのも最近虫に関係した不思議なことがあったしな」
「虫関係・・・ですか?」
「あっ!い、いやなんでもない、なんでもないぞ!!」
ベルティーナが不思議そうな顔をした途端デトラは顔色を変えた。
「あれ、なんで隠―――」
「あーっ!兄ちゃん空から10tハンマーがあああああ!!」
俺が全ての言葉を口から出しきる前に、泥鴉が足に握って振り落とした10tハンマーに頭が直撃する。
次の瞬間、俺は頭をテーブルに叩きつけ両手で頭を押さえて叫んだ。
「ぁぁあああああああああああああ!!!」
俺が頭が割れそうな苦痛で叫んでいるのにもかかわらず、泥鴉はそれが聞こえないかのようにソファーから俺をほっぽりだした。そして床に叩きつけられ力が入らない体の上に泥鴉がとまる。
「えっ!?突然どうしたんですか!?」
「だ、大丈夫だベルティーナ!ほ、ほらワタシの方を見ろ!!」
「いや10tという文字が書かれたハンマーで殴られてたんですけど!?本当に大丈夫ですか!?」
「おっお前なにしやがん―――」
『うるせえ兄ちゃんの頭はガバガバか!?』
『えっ』
俺が泥鴉の体を掴もうとした瞬間意外な言葉が出てきたせいで体が止まった。
『デトラはあの件で半獣人の頭を撃ち砕いたんだぜ?そんなのが他の半獣人に知られてみろ!いくら虫虫言ったってここらへんの地域には存在しない虫だ。図鑑を三日ずっと読んでる奴にしかわからないような虫のせいにしてもそれを知らない奴らは普通はこいつらが妄言吐いて殺したって考えるだろ?』
『あれ?お前でもこの前半獣人の子連れてったじゃん。あれはどうなってんの?』
『理由をちゃんと話したし俺と約束したがら大丈夫だ!安心しろ!!』
『お前も結構ガバガバじゃ―――いや、でも結局ベルティーナもそのことしらないし黙っているのか・・・よし、おkだ』
俺は床に倒れていた自分の体の体制を立て直してすぐさまソファーに座った。
「あの、お二人とも大丈夫ですか・・・?」
「いや大丈夫大丈夫!俺達仲いいもんね泥鴉君!!」
「そうだな兄ちゃん!今のもあれだよちょっとしたおふざけだよ!!」
「そ・・・そうなんですか」
『なんだあいつら演技ヘタクソか!?ちょっと引かれてるじゃないか!』
デトラは内心焦りながらも表情にはそれを出さずついさっきと同じような落ち着いた表情だった。
「あー―――まあ謎の虫は新しい実験に何か使えるかもしれないし、あと攻撃が効かない謎の魔獣ももしここまで来てしまったらメンドウなことになりかねないだろ?問題の種は速球に掘り起こすべきだ」
「でもあまりにも危険すぎます、さっき説明した通り謎の魔獣にはどんな攻撃も効きませんでした。そんな魔獣が集落の周囲を歩いています!しかも謎の虫まで蔓延っているかもしれない場所に・・・」
「安心しろ、ワタシは泥を操る泥の魔女だ。そんな奴らがきたら釘刺しにしてやるさ!キヒヒヒ!」
「で、でもそんな・・・」
「大丈夫だぜ、オレッチもついていくからよ!」
「ドロヘイもついてくるしなぁ?」
デトラはこちらをニヤリと笑いながら睨みつけてきた。その表情を不機嫌な顔に変えるわけにもいかず―――
「あー・・・勿論だ、俺も行くさ。さすがにこの森の中一人で帰らせるのはな」
「―――と、いうことだ。行きたくないなら別にいいぞ?来るなら勝手についてくるんだな」
「―――――」
少し戸惑うベルティーナにデトラが近づいて腕を組みながらドヤ顔で近づいた。
「―――わかりました、では」
ベルティーナはそう言うとソファーから立ちあがり、突然右手に巻かれていた包帯を解いた。
「あなたがたは二度も僕のことを助けてくれました。さらに今から危険な場所に行くのなら僕の魔法を知っていただいてた方がいいですし、デトラさんは外道魔女ではないみたいですしね」
そう言った直後、包帯が巻かれていた右手の甲に白く光輝くマークが浮かびあがった。
「―――ほう、この紋章は・・・!!」
デトラが興味津々な目ベルティーナの謎のマークを見つめている。泥鴉も驚いているのだろうか?全く動かないがデトラと同じく謎のマークをじっと見つめていた。
―――あれ?このマークどこかで見たような・・・
みんなが静まり返っていたその時、ベルティーナはゆっくり口を開いた。
「僕が使える魔法は千里眼です」
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