森の中を走る
かなり走ったような気がするが今どのあたりまで来たのだろうか?
泥鴉がこっちの方向に走れと道を教えてくれた。俺はそれを信じて森の中を走っていたのだが、どこに行っても木と草と草と木と草・・・道もないし誰かが通ったような足跡もない。完全なる森の中だった。
「―――けど、もう前に進むしかない。あんな奴と一緒に過ごすのはゴメンだ」
もう戻れないだろう、それは時間にも関係がある
暗くなればなるほど出歩くのは危険になるだろうし、まずここは異世界だ。俺がいたセカイの常識が通用するとは思えない。よくあるファンタジーの魔獣が出てきてもおかしくないだろう。
金も一問無し、初期装備に武器は無しで盾無しで素手、さらに鎧は着ているが頭と手しか守れていない。
もしこのセカイの難易度がダークソ○ル並であったとしたら俺はモブにハメ殺されて死にそのまま亡者と化しているだろう。
俺は自分を信じて前に進む。
「―――しかし、泥鴉の言っていたあれは一体なんだったんだろうか」
俺は泥鴉から分かれる直前の会話の話をおもいだしていた。
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「よし、ありがとう」
俺は泥鴉が指をさした方向を見つめてから立ちあがった。その方向は家から川を挟んでちょうど正反対の場所だ。
「おいおいマジでいくのか?」
「そらそうよ、俺のこのセカイでの人生予想図にシモベとして一生を終えるなんて書いてないからな」
「―――いや、そうじゃねえ」
「―――?」
「オレッチと兄ちゃんまだ会って数分しか経過してないぜ?そんな簡単に信用していいのか?」
確かにそう言われればすの通りだ。実際会ってからまだちょっとしか時間が過ぎていない。
「もしオレッチの言うとおりにあの道に進んだら何があるかわからないぜ・・・?もしかしたらクソ強いい生き物がいるかも―――」
自分でも不思議なくらいだ。鴉が喋る時点でうさん臭いのにそんなのが言ってる事を易々と信じ、名前を聞いたこともない森の中に突っ込む奴は頭がおかしいだろう。けど・・・。
心になんとも言えない気持ちが広がった。その気持ちは・・・どこかで
「よくわからんが・・・いや、言葉にするには俺の語彙力が足りないな」
俺はしばらく自分の足元をみつめ、5秒程経過してから泥鴉を見つめた。
「変な事言うかもしれないが―――俺とお前って会ったことあるか?」
「いや、ないね」
即答だった。まあそりゃそうだな。俺は今まで喋る鴉に会ったことがない。
だけどこいつを相手にしていると何か―――。
「まあいいや―――ありがとう泥鴉」
「信じるんだな・・・まあいいや、気を付けて帰ってこいよ」
「へ?」
泥鴉の一言が理解できずに体が止まる。
「行けばわかるから行って来い、ホラホラ」
「―――おい、泥鴉お前何言って」
「ほら逃げる時間も少なくなるぞ、急がなくていいのか?」
「い、いやちょっとまて。今の言葉の意味は」
俺が聞きかけたその時だった。
泥鴉は空に飛び俺の手が届かない場所まで飛ぶと、いきなり大声で名前を呼びだしたのだ。
「おーいデトラ!!!!」
「!?」
「お前のシモベが―――」
「おいその口を閉じ―――クソ鴉!!」
俺は慌ててダッシュで川を渡り森に突っ込んだ。
あのクソ鴉のせいでデトラが起きてたら・・・最悪だな。
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「気を付けて帰ってこいよ―――か、残念だが俺は帰る気なんざ全くないんでな」
走り続けて30分ほどだろうか、俺は後ろを振り返ってデトラが追いかけてきていないか確認する。が、何も問題なさそうだ。
しかし、それにしてもだ。
「道はまだなのか?」
太陽がゆっくり沈んでいく中、俺は焦りながら道を探すがさっきと同じようにまだ森の中だ。現在進行形でずっと走っているが周りの状況もあまり変わらない。
「もしかして俺の脚が遅いのか?」
いや、そんなことはなかかった。それどころか元いたセカイの体の足よりも速く感じるし、スタミナもかなり続く。
もしかしてだが―――この体は当たりなのかもしれない。
その時だった。目の前に横に延びている明かるい場所、木がはえていないおかげで影がない場所があった。
「もしかしてあれが!?」
俺は全身の力をフルパワーで使う、すると異常な速さでみるみる近づいていく。
間違いない、あれはまさしく―――!
「やった!道だ!」
そこには明るい夕日で赤く彩られた幅10mほどの道があった。
「よし、誰かがここを通った後もある」
道のいたるところには馬が通った後の他に、右から左にずっと続いているくぼみがあった。が、それは俺が見たことがないくぼみをしていた。
「―――この細いくぼみは馬車なのか?」
確証もない、ただ異世界転生といえば中世だよね!で思いついただけだった。
だけどもしそうだとしたらこれはかなり有益な情報だ、転生したセカイの科学力や時代背景を予想できる!
俺はそう考え、頭の中をフルスロットルで回転させる。高校生で習った世界史を今ここで・・・!
「―――けど俺体育以外2じゃん!糞が!」
俺は近くの木に自分の頭をぶつけまくる。
「ああ糞が、糞が、糞が!」
頭をぶつけ過ぎたせいか木の皮が削れて中身が見えていた。
まさかここで世界史の授業が必要になるとは・・・元のセカイの自分に後ろからさされたような気分だ。
その時だった。
「!?うっ――――」
その鼻につくような臭いは突然―――いや、もしかしたらもっとさっきからその臭いは漂ってきていたのかもしれない。俺はその臭いに驚き頭を止めた。
吐き気がしてくる、本能が危険を叫ぶ。なんだこの生理的にキツイ臭いは―――!?
「鉄の―――臭い?」
いや、それよりももっと生生しい。その臭いは間違いなく過去にも臭ったことがある―――人の血の臭いだ。
嫌な予感がする。もしかして―――誰か襲われているのか!?
「治安悪すぎるだろ・・・!!」
すぐさま臭いが漂ってくる方向、そして風向きを調べた。もし誰かが怪我をしているのなら助けなくてはならない。
風は俺が道に出てきた場所から反対側の奥からだった。
「まってろ、すぐ助けに行く!」
俺はそのまま走り、草や木が生い茂る中に突っ込んでいった。
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