第131話 準備はいいか?

「よし、パーティー同士の同盟も、これで大丈夫だろう」

「そうですね。あとは開始時間を待つだけです!」


 パーティーごとにテーブルに固まって座り、パーティーや同盟の設定も完了。

 パーティーリーダーになった僕の隣にはトーマ君が座り、スミスさんと軽く話をしていた。


「えっと、移動はしなくてもいいんでしたっけ?」

「そうだな。場所は関係なく、時間になると始まるらしいが」

「ならもうすぐですね」


 時間まではあと10分ほど。

 のんびり話してたりすれば、すぐ経つんじゃないかな?




「そろそろやな」


 みんなで雑談をしていたところで、急にトーマ君が話を切る。

 その言葉にシステムの時計を確認すれば、イベント開始時刻まで後30秒ほどになっていた。


「どんな感じで告知が来るんだろうね」

「わからんな。急に目の前に現れるとかやなかったらええわ」

「……それは僕も嫌かも」

「2人とも、静かに。始まるみたいだぞ」


 アルさんの言葉と同時に、各テーブルの上にウインドウが立ちあがった。

 アルさんのパーティーの方にも、同じ感じで立ち上がってるのが見える。

 多分、パーティーの場合はパーティー単位で観れるようにしてあるのかもしれない。


『――あーあー、マイクテスマイクテス。OK聞こえるか、プレイヤー諸君』


 その声と同時に、ウィンドウの中に男性の姿が映された。

 見た目的には、30代くらいかな?

 ちょっと無精ひげが生えてて、なんていうか……あんまり見た目は良くないような……。

 開発の人なのかもしれないけど、もう少し清潔にしてから出てくれば良いのに……。


『見た目に関しては気にしないでくれ。急遽俺が代役することになったからな。女の子が良かったとか、そう言ったのはまた次回に期待しておいてくれ』

「そこは言う必要があるのでしょうか……?」

「オリオンさんは気にしないんすね。俺は出来ればアキさんみたいな女の子がいいっす」

「す、スミスさん!?」


 い、いきなり何を言ってるのかなこの人は!?

 僕とスミスさんの間に座ってるトーマ君も、同意するみたいに頷いてるし……、えぇぇ……。


『さて早速だが、第1回のイベントの説明をさせて貰うぞ。準備はいいか?』


 そんな雑談をしていた僕らも、ウィンドウの中の男性の言葉に、一斉に口を閉ざす。

 さすがに僕らだって、大事なところを聞き逃すわけにはいかないからね。


『つってもすでに知ってるやつもいるだろうが、今回はとある島を開拓してもらう。人数は多いが……喜べ全員同じ島だ』

「な!?」

「マジかよ」

『まぁ、転移場所がキャンプからある程度の距離でランダムになるんでな。そこは気をつけてくれ。ただ、同盟やら組んでりゃ基本的に同じ位置に転移されるはずだ 』

「な、なるほど……」


 まさかの、全員同じ島……。

 これは、その……すごい広い島なのかな……。


『期間は2週間。その間は、ログインしなおしても、島にログインするようになる。死んだ時も同じだ。また、1週間以内なら今日以降にイベント参加も出来るようにはしてあるんでな。気軽に参加してくれ』

「なんつーか、緩いな……」

「そ、そうだね……」


 つまり、今用事があって参加できない人も、1週間以内ならイベント参加でエリアへの移動が出来るってことだね。

 それなら、ほとんどみんな参加出来るし、面白いかも!


『そんじゃ、あとは適当に頼むわ。5分後には移動開始なんで、ウィンドウ立ち上がったら参加申請してくれよ! じゃ!』


 説明もそこそこに、男性は片手を上げて、ウィンドウの中から消えていく。

 い、いくらなんでも説明が雑すぎませんかね!?


「だ、代役とは言え……すごいな」

「まぁ、僕らにはトーマ君がいたからそこまで情報に驚きが無かったですけど……」

「そうだな……。改めてトーマには感謝が必要だな」

「そうですね。トーマ君には足を向けて寝れないかもです」


 僕はそんな会話をしながら、トーマ君の方へと軽く頭を下げる。

 そんな僕の横で、アルさんも同じように頭を下げたのがなんとなく分かった。


「……やめーや。アルも悪ノリすんなや」


 声に顔を上げれば、少し照れくさかったのか、顔を向けずに頬を掻くトーマ君がいた。

 ……トーマ君が照れてるのって珍しい……!


「トーマ君、照れてる?」

「照れてへん」

「いやいや、アキさん。こいつは絶対照れてますって」

「スミスさんもそう思う?」

「そうですね。間違いないですよ」


 両腕を前で組みながら、スミスさんは大きく縦に首を振る。

 その行動にさすがに臨界点が突破したのか、トーマ君は急に立ち上がって……。


「だーうっさいわ! ほれ、ウィンドウ立ち上がったで! いくで!」


 なんて、無理矢理話を断ち切って、僕らに転移を促した。

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