第104話 果汁入りポーション、完成です!

「ど、どうかな?」

「うん、良く出来てるね。すごいじゃないか」

「おばちゃんのおかげだよー。ルコの実教えてもらえなかったら、出来なかったし」

「何言ってるんだい。私はちょっと伝えただけじゃないかい。これは、あんたが作ったんだよ」


 そう言って、おばちゃんは僕の頭を少し荒めに撫でてくれる。

 嬉しいけど、頭が……頭がゆれるぅ……。


 アルペの果汁入りポーションが完成した次の日、僕はログインしてすぐに、おばちゃんに試飲をお願いしていた。

 おばちゃんから見ても大丈夫そうなら、アルさんに渡しても大丈夫だろうし……。


「それで、これを応用するのかい?」

「ですね。同じ形で試してみようかと」

「なら、粉末じゃない元の状態で渡した方がよさそうだね。ちょっと待ちな」

「あ、はい」


 おばちゃんは、お店の棚の奥から、細めの草を数束取り出して、僕へと渡してきた。


[薬の原料(イベントアイテム):鍛冶屋のガラッドのイベントで使われるアイテム]


「えっ!?」

「おや、どうかしたかい?」

「このアイテム……、名前が……」

「ん? いつも通りだろう?」


 え!?

 そんな!? と思って顔を上げておばちゃんを見れば、おばちゃんの様子は至って普段通りで。

 ということは、このアイテムの名前や詳細は、これが当たり前ってことだから……。

 このアイテムはガラッドさんのイベントでしか出てこないってことなのかな……?


「僕の気のせいだったみたいです。えっと、これをいつもは粉末にしてるんですか?」

「あぁ、そうだよ。乾燥させて粉にするのさ。あんたもよくやってるだろう?」

「なるほど。わかりました!」


 おばちゃんに頭を下げて、原料の束を持ったまま奥の台所へ向かう。

 その背に向けて、おばちゃんの声がかかった。


「あの子は、オレアが好物だからね。できればオレアの味にしてやっておくれ」

「ん? オレア?」


 その場で向きを変え、首を傾げる。

 アルペがリンゴだから……、オレアはオレンジかな……?

 オレンジジュースみたいな?


「そうさ。オレアってのは、少し酸味のある赤色の実さ。露店では買ってこなかったかい?」


 言われてインベントリを見てみても、それっぽいものは見当たらない。


「あー、買ってきてないみたいです」

「そうかい、それじゃまた行くときに買っておいで。あと、オレアは酸味が強めだからね、ジュースにするときは甘みを加えてやりな」

「あー、砂糖……ってこっちでもあるんですか?」

「外の世界でもそこは一緒かね。こっちにも砂糖って甘い粉はあるよ。露店か、私の店でも売ってるから、使うなら買ってきなよ?」

「わかりました。ありがとうございます!」


 ひとまずは薬の原料で、ポーションと同じ液体状の薬が作れるか試してみて、それが大丈夫なら、次は苦みの抽出……。

 その後でアルペと合わせてみて、上手くいけばオレアを買いに行って、オレアでの試作……。

 結構大変そうだなぁ……。

 でも、もう少しではあるんだし、がんばろう!




 まずは実験のために、1束だけで試してみようと思う。

 というのも、ポーションと同じ量でやっても、もったいないだけだから……。


「まずは普段のポーションと同じように刻んで……」

「その間にお鍋に水を入れておきますね。いつもより少なくていいですよね?」

「うん、1束だけだから大丈夫だと思う」


 シルフの言葉に頷きつつ、包丁で原料を刻んでいく。

 なんだか少しだけ、薬草より柔らかいような……?

 鍋を火にかけて、沸いたタイミングで原料を入れていく。

 あとは、いつも通りお玉で混ぜつつ、灰汁を取っていくだけ。


「んー……?」

「なんだか、白色です……?」


 薬草と違って、どんどんお湯の色が白くなっていく。

 灰汁を取りながら10分ほど煮ていけば、お湯は綺麗な乳白色に変わっていた。

 見た感じだとトロみがありそうだけど、掬ってみたらそんなこともなく、サラサラとしたお湯になってるみたいだ。


「だいぶ……薬草とは違うね……」

「そう、ですね……」


 驚いてても仕方がないし、とりあえず瓶に詰めてみよう。

 これで薬になってればいいんだけど……。


[風邪薬(液):鍛冶屋のガラッドのイベントで使われるアイテム

苦みはそのままだが、液体状になっており、飲みやすい]


「よし!」

「まずは一歩、ですね!」

「とりあえず、これを飲ん……で、いいのかな?」

「えっと……、どうでしょう?」


 大丈夫だと思うんだけど、イベントアイテムだし……。

 でも、飲まないと味の変化もわからない、よね?


「……飲もう!」

「あ、はい」


 とりあえずシルフにお水を用意してもらう。

 いつものことながら、飲む瞬間は怖いなぁ……。

 予想以上に苦かったらと思うと、どうしても飲むのをやめたくなるよ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る