第20話 森の中と<鑑定>スキル
「アキ様、そちらにも」
「ん、ありがと」
「いえいえ」
僕は今、シルフと2人で森へ素材の採取に来ていた。
というのも、前回の調薬で薬草が底をついてしまったこともあり、気分転換を兼ねて採取にやってきたというわけだ。
初日に薬草を採りに来た場所から、さらに少しだけ奥へ進めば鬱蒼とした木々生い茂る森がある。
薬草以外にも、木の実やら枝、色とりどりのキノコに至るまで、採取し放題よりどりみどりのエリアだ。
「まあ、採取したところで使い方がわからないんだけどね」
そんなことを呟きつつ、また薬草をインベントリに放り込む。
<採取>スキルがあるからか、何かしらの素材として使えるかどうかは、なんとなくわかるんだけど……。
「せめて名前か効果ぐらいが分かればなぁ」
「今の私たちからすると、草……木の実……キノコ……みたいな感じですしね」
「それそれ。素材とかの詳細がわかるようになるスキルとかあるのかな?」
「どうでしょう……?」
こういったのに詳しそうな人って……あ。
そういえば、以前会った時に「何個か情報が入ってきとる」って言ってたし、教えてくれるかわかんないけど訊いてみるかな!
えーっと、システムからフレンドリストを開いて……目的の人のところをタップして。
タップして……タップして?
「ど、どうするんだろ? 何も開かないし、えっと……?」
長押し? 連続タップとか? はっ、もしかするとスワイプ!
「でもないかー……」
『……くは、あかん。すまん我慢の限界や。ぶふ……』
「え?」
もしかして、繋がって……る?
『あかん、おもろすぎるわ。いつ気付くやろと思っとったけど、全然やし』
「え、え!?」
『念話はリストでタップしたら発信やで。一瞬ノイズ走るやろ』
「もしかしてトーマ君? もう繋がってるの?」
『やから、繋がっとるって。……ぶふ……』
「わ、笑わないでよー! 出てるなら出てるって言ってくれればいいのに!」
『すまんすまん』と笑うトーマ君の声を聞きながら、思わず両手で顔を覆う。
あまりの恥ずかしさに、今が森じゃなくて街の中だったら、思わずログアウトしてたかもしれない。
周りに人がいなくて良かった……。
『それでなんや? なんか用があったんやろ?』
「ああそうそう。今近くの森に来て採取してるんだけど、採ったアイテムの情報が分からなくて困ってるんだよね。それで、情報が分かるようになる方法って何かあるかな?」
『ああ、なるほど。すぐに出来るのが1つ、時間はかかるがずっと使えるのが1つやな』
「一応両方教えて貰ってもいいかな?」
『あー、片方はおすすめせんで?』と前置きをしてから、トーマ君は細かく教えてくれた。
まず最初のすぐ出来る方は、いわゆる漢鑑定と呼ばれる方法らしい。
やり方は簡単で、使ってみる、これに尽きるらしい。
草や木の実、キノコなんかをその場で食べる、という鑑定方法らしいけど……毒があったりとか、ダメージを受けたりとかって可能性もないわけじゃないから、おすすめしないんだって。
急ぎの場合になら……一応選択肢にはいるかも、ってところらしい。
『もうひとつは、スキルを習得することやな』
「あ、やっぱりスキルがあるんだ」
『せやで。<鑑定>っつースキルや。本来はそっちを使うんが基本やな。最初は分かる情報が少ないんやけど、レベルが上がるごとに見える情報も増えるらしいわ』
「ふむふむ。それでそれで?」
『ただ、習得するんは時間がかかるで? 知識増やして実践するしかないしな』
「あー……なるほど」
トーマ君いわく、人から教えて貰ったり、本を読んだり……その他いろいろなことでその素材のことを調べてから、実際に採取をするときに、知識を思い出しながら採取を繰り返す。
それが習得方法だと、聞いたらしい。
『とまあ習得までは面倒なんやけど、習得さえしてまえば育てるんは使っていけば良いだけやしな。生産をメインでやるんなら、持っといて損はないやろ』
「んー、わかった。ちょっと頑張ってみるよ」
『おう、がんばりー』と少し笑い混じりな激励を貰い、彼との念話が切れる。
<鑑定>か……とりあえず薬草はある程度採れたし、今度おばちゃんにでも森で採れるアイテムについて色々教えてもらおうかな。
そう思って、背にしていた木から立ち上がり、服の裾を叩いて汚れを落としていた僕の耳に「アキ様!」とシルフの声が飛び込んできた。
その言葉に「え?」と反応した瞬間――
僕の身体は宙を舞っていた。
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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌
防具:ホワイトリボン
冒険者の服
冒険者のパンツ
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.4→5><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5>
精霊:シルフ
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