第19話 失敗と成功?
僕の目の前で、緑色の液体がぐつぐつと音を立てながら煮込まれている。
作っているのは下級ポーション。
ただ、前回作ったときと作り方を変えて試してみている。
「味よりも喉ごしが悪かったから、水を少し多めにしてみたけど……」
「全然混ざらないですね」
前回の蜜と水の割合が1:1だとすると、今回は1:1.5。
その結果が、5分以上混ぜていても全然混ざらず、最初と変わらずドロドロと妙な色を発したままの鍋の中身だった。
「これはダメっぽいね」
「そうですね。先ほどから全然状態が変わっていないみたいですし」
シルフから見てもそう見えるみたいだし、仕方ない。
「勿体ないけどここで諦める!」と作業を止めて、火を落とし、少し冷ましてから1本だけ試しに入れてみた。
[緑色の液体:効果なし
薬草が入っているが、回復力が失われている液体]
ドロドロしたままの液体をなんとか入れて確認してみれば、案の定失敗作。
「気を落とさず……」と慰めてくれるシルフに頷きつつ、瓶の中身を捨てる。
そういえば、なんだかんだで初めての失敗作かもしれない。
腐った即効性は、臭いとか状態異常とかあるけど、一応お薬にはなってるわけだし……アレを飲もうとは思わないけれど。
それ以外は全部飲める形で成功してるし……?
「いやいや、大丈夫大丈夫。失敗は仕方ない、切り替えていこう。っと残りの薬草はあと10束か」
「5束ごと煮込むのにちょうど良い大きさのお鍋ですから。消費が早いですよね」
「まぁ、そのおかげでスキルのレベルが早く伸びてるみたいけどね」
それに、大量生産するときとかは凄い楽だしね。
まぁ、そのためにも薬草はいっぱい必要なんだけど。
「アキ様。今度はどんな形で?」
「今度は蜜を増やしてみるかな。なんとなく失敗しそうな気がするんだけど、やってみないことにはわからないからね」
「ですね」と頷くシルフを横目に流しでガチャガチャと鍋を洗い、シルフに乾かして貰った。
ちなみに、[最下級ポーション(良)]はすでに70本用意してある。
もし下級の良品が完成しなくても、アルさんにはそっちを渡せば問題ないだろうし。
できれば下級の良品も渡したいところなんだけどね……。
「でも、薬草も残り少ないし……次も失敗したら気分転換も兼ねて、薬草でも採りに行こっか」
「はいっ!」
時には身体を動かさないとダメだし、同じ場所で考えてるだけだと煮詰まっちゃうだろうし。
それに調薬のレベルもいい感じに上がってきたから、今度は採取とかのレベルも上げたいし。
「それじゃ始めよっか」といつも通りに薬草を包丁で刻んで、[アクアリーフの蜜]に漬け込む。
その際に使う蜜の量を、いつもより1個多めの3個にしてみてっと。
量的には2個で充分なんだけど、物は試しってやつだよね。
漬け込みつつ手で薬草を揉んで、蜜の中で繊維状になるまでドロドロに溶かしてしまう。
「こうやって薬草がドロドロに溶けていくのを見てると……いつか自分の手まで溶けていきそうだよね……」
「あ、アキ様……」
まあ、そんなことは起きないんだけど。
想像したのか、身体を震えさせたシルフに笑っていれば、いい具合に薬草が溶けきったので、それを鍋に移し火にかける。
そして蜜よりも少ない量の水を加えて……。
「うん。やっぱりちょっと硬いね」
「柔らかくなってくれれば良いんですが……」
「……むしろ今までで一番硬いかもしれない」
というか、混ぜれば混ぜるほど硬くなってる?
ドロドロっていうより、どんどんポテッとしてきたような……。
「これ、なんだかクリームみたいになってきた?」
「……そうですね」
「でも変化してるってことだし、このまま混ぜてみよう」
とりあえずそのまま5分ほど混ぜ続ける。
ぐるぐると、ぐるぐると混ぜ続ければ、どんどん硬くなってきて、最後の方はもう腕が悲鳴をあげていた。
「も、もう良いかな……?」
「これは、成功? なんですか?」
「さぁ……?」
ひとまずお玉でひとすくいして、お皿の上に取り出してみれば――
[薬草(軟膏):10秒ごとに、HP2%回復。持続時間2分
薬草の成分が入った軟膏。少しスーッとする]
「なんだか違うものが……」
「えっと、おめでとうございます?」
なんとも微妙な空気になっちゃったけど、一応回復アイテムだし……?
ただ、一定時間ごとの回復アイテムって、使い勝手がよくわからないなぁ……。
先に塗っておかないといけないみたいだし。
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名前:アキ
性別:女
称号:ユニーク<風の加護>
武器:木槌
防具:ホワイトリボン
カギ編みカーディガン(薄茶)
白いワンピース
冒険者の靴
スキル:<採取Lv.4><調薬Lv.6><戦闘採取術Lv.5>
精霊:シルフ
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