第520話 ◆古城の魔女
◆古城の魔女
大ピンチに陥ったユカを、かぎ爪恐竜から救ったのは、そう・・メイアだった。
メイアは遠く離れた港町に遠洋漁業に出ていた船団が帰港したという情報を聞きつけ、美味しい魚をその町まで食べに行くところだった。
その日は追い風に乗ってスピードも上がっており、想定していたよりも早く目的地に着けそうなので、魚もお腹いっぱい食べれるとウキウキしていた。
そんな中、ふとセレネと同じようなにおいを感じて下界を見れば、これまたセレネによく似た女の子がかぎ爪恐竜に追われて、必死の形相で逃げているではないか。
メイアは考えるよりも早く、女の子を助けるべく宙に輪を描きながら急降下して行った。
みるみるうちに女の子の体は大きくなり、汗で濡れたブラウスに淡いピンクのブラが透けて見えるまでの距離になった。
もうすぐ背後にかぎ爪恐竜が迫っている。
その時、女の子と恐竜との距離は僅か3m。 女の子は何やらブツブツ叫びながら走っているが、メイアには最後の方の「ゴメンナサイ」しか聞き取れない。
メイアは翼を大きく動かし急制動をかけると同時に、その大きな足で女の子をぐわっと鷲づかみにすると、すぐさまその場から離脱した。
ガシュッ
かぎ爪恐竜が女の子に飛び掛かったとき、その鋭い爪が少しだけメイアの足をかすめたが、ドラゴンの鱗うろこは非常に硬くかすり傷さえもつかない。
取り敢えず助けてしまってからメイアは考えた。
これ、どうしよう・・・
この辺りに降ろせば、また恐竜や魔物の類たぐいに襲われる可能性が高い。 かといって港町までぶら下げて行くのも可哀そうな気がする。
メイアの飛行速度なら港町までは30分ほどだが女の子をぶら下げていたら、そこまでスピードを出すわけにはいかない。
なぜならメイアの飛行速度では、風の抵抗をもろに受けて息が出来なくなってしまうからだ。
しかし、ゆっくり飛ぶと港町までは5~6時間はかかってしまう。
それだけの時間、ぶら下げられているのも苦痛であろうし、それにそんなに時間がかかったら、着いたころには魚が残っていないだろう。
メイアにとっては、寧ろそっちの方が大問題なのである。 なんだか魚のことを考えていたら、涎が溢れて来た。
ポタッ ポタッ
ぶら下がっているユカの頭の上に、生暖かい滴しずくが落ちて来る。
なんだろう・・ 雨? でも・・ 水と違うみたいな・・
手を伸ばして髪についた液体を拭うと確かに水ではない。
拭った親指と人指し指についたそれは、合わせた指を離すと若干糸を引く。
う~ん なに?
***
考え抜いた挙句、メイアは女の子より魚を取ることにした。
それは女の子を降ろすのに格好の場所を思い出したからだ。
その場所は、ここから20分ほど離れた海辺の断崖に立っている古城だった。
その古城にはメイアがよく知っている最強の魔女が住んでいる。
セレネと同じにおいがする女の子なら魔女はきっとこの娘を預かってくれるだろう。
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