第513話 ◆アリシアの大冒険(その24) アリシア死す?

◆アリシアの大冒険(その24)



やったーー!  ついに頂上に着いたわよ。


これで、あとは村までずっと下り坂となるので、やっと一息付ける。


あたしは腰を下ろせそうなところを探すため、少しだけ平らになっている頂上付近を歩き始めた。


でもそんなに都合よく丸くてお尻サイズの石などが、その辺に転がっているはずもない。


地面や草の上に直接座ると夜露などで濡れていて、たいへんな事になる。


もちろん替えのパンツなど持ってはいない。




2分ほど辺りをウロウロしたけど、どうやら座れそうなところはなさそうで、ガッカリする。


仕方がない。 休憩なしでゆっくり歩いて下ろうかしら。


そう思って村へ下る道の方へ向かうと地面に黒い染みがあるのに気付いた。


まだ暗いので見落とすところだったけど、どうやらこれは血のあとのようだ。


まさか・・・ ディアの身に何かあったのだろうか。


あたしは急に不安になる。




ガサ ガサッ


いろいろと考えていると、ふいに背後の草むらで何かが動いた。


あたしは、咄嗟に飛び跳ねて音がした方へ向きを変え、身構えた。



アリ・・シアさん・・・


えっ?  アレッタなの?


うっそうとした草むらから出て来たのは、なんとアレッタだった。


ねえ、ディアは?  一緒じゃないの?


ええ。 さっきまでは一緒にいたんだけど・・・


アレッタは、うつむいたまま小さな声で何かを言っている。


アレッタってば。 声が小さくて聞こえないよ。


あのね。


さっきまで一緒にいたんだけど、お腹が減ってしかたがなかったから、あたしが食べちゃった。


こん風にね。


そう言うとアレッタはあたしの両腕をぎゅっと握って来た。


痛っ!


アレッタ!  なにするの?  離してよ!


いやよ。  まだお腹が減ってるんだもの。


そう言いながらアレッタは、口を大きく開きながら迫って来た。



ひっ!


大きく開いた口には鋭い歯が幾層にも生えている。


そして、大量の涎を垂らしながら、あたしを飲み込まんばかりに更に大きく口を開いた。


見れば顔の半分以上に口が裂けて、まるで獲物を飲み込む大蛇のようだ。


抵抗しようにも魔力は空っぽで何もできない。



もうダメ!  食べられちゃう・・


あたしは観念して目をぎゅっと瞑った。



ガブッ


グチャ グチャ


ヴイーヴルが肉を喰らう音が辺りに響く。


たった三口ほどで、その肉塊はヴイーヴルの腹の中に消えて行った。



こんなものでは足りない。 早く村に行って人間どもを喰らい完全に復活するのだ。


まだアレッタの姿をしたヴイーヴルは、ゆっくりと村へ下りる道へと向きを変えた。






***


キャーー  アリシアがーーーー!!


あんた、なんてことするのよ!  このっ!  このっ!


ボカスカッ


痛い!  やめてくださいよーー!


あたしのアリシアがーーー!  死んじゃったーーー!  あーん  あーん。


セレネさん。 サブタイトルをよく見てくださいよ。


・・・

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