第514話 ◆アリシアの大冒険(その25)
◆アリシアの大冒険(その25) いたずら
ヴイーヴルが山を下りてから、しばらくして山頂がまばゆい光に包まれる。
そしてその中心からララノアの上半身が、うっすらと見え始めた。
ほんの少しの時間をおいて、ララノアの全身が出現するとその光は徐々に弱まり、やがて辺りは暗闇に包まれた。
ララノアは、ここがどこなのか確かめるように、辺りをゆっくりと見回した。
だが山頂は、まだ闇に包まれている。
そこでララノアがエルフの里から持って来た聖なる杖を強く握ると、杖から光が溢れ辺りを照らした。
杖をかざしながら、再びゆっくりと周囲を見回す。
魔法陣は、娘アリシアのいる場所へ導くように描いた。 なので、アリシアはこの近くに居るはずなのだ。
しばらく探していると。
これは・・・ ララノアは、地面に大量の血だまりを見つけた。
それはまだ固まり始めてもなく、ほんの少し前に流れ出たものだった。
ふぅ~ ララノアは大きなため息を一つ吐いた。
二人ともそこに隠れてないで、早く出てきなさい!
近くの草むらを杖の明かりで照らすと。
ちぇ~ もうバレちゃったのかー。
アリシアとヴォルルさん1/10が、照らされた茂みからのそのそと出て来た。
もう・・ こんなに早く見つかるなんて、ぜったいに叔母様が悪いんだからね。
あらあら。 せっかく助けてあげたのに、アリシアったらあたしの所為にしてひどいわ~。
叔母様、それは本当に感謝してるけど、あたしの身代わりがメガネザルだったのは、ちょっと納得できないわ。
仕方がないじゃない。 ちょうどこの近くに居たのがメガネザルだったんだから~。
あのサルに魔法をかけて、アリシアの姿に変えるのだって時間がなくて大変だったのよ。
そうね。 身代わりになってくれたサルには可哀そうなことをしてしまったわ。 あとで絶対に仇を取ってやらなくっちゃね。
さてそれで、これはいったいどうゆうことなのか、きちんと説明してもらえるかしら。
ララノアが怖い顔で二人を見ながら言うと。
あーー 話すと長くなるんだけどなーー。 アリシアが両腕を自分の頭の上にまわして空を仰ぐ。
いいから説明しなさい!
ママ(ララノア)を怒らせるとほんとうに怖いことになる。 もしかしたらヴイーヴルより怖いかもしれない。
えーっと。 あたし、セレネに言われてエルフの里に帰るところだったんだけど、途中でいろいろあって・・・
それで、お城を出た時からヴォルル叔母様が一緒について来ていたのを、ついさっきまで知らなかったんだけど・・・
大ピンチになったら叔母様が出て来て助けてくれて・・・
アリシアはときどきヴォルルさんを見て、擁護してもらいたそうな顔をする。
でもヴォルルさんは、明後日の方を向いて知らんぷりである。
・・・だいたい分かったわ。 お姉さま、娘を助けてくださって本当にありがとうございました。
姉に深々とお辞儀をしたララノアは、今度は娘の方を向いて・・
アリシア、霊獣を召喚できるようになったのはよく努力をしたのだとと思います。
けれど、もしヴォルル姉さまが助けてくれなければ、あなたはもうこの世に存在しなかったことでしょう。
はい・・
まだまだ半人前なのを自覚して、これからもしっかり修行を続けていきなさい。
はい・・
それまでは、エルフの里へ帰ってくることは母は許しません。
えーーっ
わ・か・り・ま・し・た・ね! ララノアの目はヴイーヴルより怖い。
はい。 わかりました。
それでは、せっかくここまで来たので、可愛い娘を襲ったヴイーヴルを始末しに行きましょうかね。
それを聞いたアリシアはすごく驚いた。
ちょっと、いくらママと叔母様でもアイツはヤバイわよ! やめた方がいいって!
アリシア。 さっきのアレッタは、ディアとかいう娘が金の矢で浄化寸前まで追い込んだ状態なの。
だから完全復活する前に倒してしまう必要があるのよ。 ディアのためにもねっ。
叔母にそう言われ、アリシアも涙を流しながらうなずいたのだった。
***
アリシアが生きててよかったー。
ちょっとセレネさん。 さっきはよくもボコボコにしてくれましたね!
あはっ、いったいなんのことかしら?
すっとぼけてると次はセレネさんが死んでしまう番かもしれませんよ。
いや、ほんとごめんなさい。 ゆるしてください。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます