第511話 ◆アリシアの大冒険(その22)

◆アリシアの大冒険(その22)



あたしは、召喚した霊獣たちを元の世界へ戻すため、大きな魔法陣を地面に描いた。


呼び出すときは小さくても問題なかったけれど、戻すとなると霊獣の体が魔法陣の中に収まらないといけないのだ。


ちぎれた尻尾などは離れた所にあったので、魔法陣は全部で5つも描かならず、それだけでもうへとへとに疲れてしまった。


それでも最後のひと踏ん張りで、何とか無事に霊獣を元の世界へと帰してあげることが出来て、ほっとしたら急に眠気が襲って来た。


・・・

・・


いったいどのくらい眠っていたのだろう。


気が付けば辺りはもう薄暗くなってきている。


お腹が減っていたけれど、ここには食べ物はない。


のろのろと起き上がって、あたしは一足先に村へと向かったディアの後を追うことにした。



しかし、お腹が減ると力が出ないというのは本当だ。


あたしは霊獣たちを全て帰してしまったことを少し後悔していた。


怪我をしなかったフェンリル(巨大な狼)を残しておいて、フェンリルに乗って村へ向かえば楽だったのに・・・


かと言って、もう一度召喚するような魔力は残っていないし、自分の足で歩いていくしかない。


魔力が底を尽きているので、空も飛べない。


ほんとうに、自分は日常の中で魔力に頼り過ぎていたのが身に染みて分かる。


そこのところは、セレネを見習わないといけないと思う。



少し歩いたら、もう辺りは真っ暗闇になってしまった。


今夜は雲が多く月が隠れているので、森の中は本当に真っ暗だ。


こんな時は木の上で寝てしまえばいいのだろうけど、さっきまで爆睡していたので、眠くないのだ。


指先から、小さな炎をちょろちょろ出して、辺りを警戒しながら進む。


ディアは、このあたりには魔物はいないと言っていたけれど、油断はできない。




***


ディアは、アレッタを背負って村へと急いでいた。


さっきからアレッタの様子がおかしいのだ。


背負っているので顔は見えないのだが熱があるし、その所為なのか酷くうなされている。



あと少しで村に着くからね。


意識のないアレッタに話しかけながら、山道を進む。


しばらくして山の頂上に着くと、眼下に村の明かりが幾つか見えた。


あと1時間くらいで村に着ける。


そう思った時、アレッタが背中でビクンビクンと大きく痙攣した。


ディアは驚いて、その場でアレッタを背中から下ろしたが、体が跳ね上がるほどに大きく痙攣し始める。


アレッタ・・  しっかりして!


ディアがアレッタの手を握ると、アレッタがすごい力でディアの手を握り返して来た。


痛っ!


その尋常でない力に思わずアレッタの手を振りほどこうとしたディアは、アレッタの顔を見て悲鳴を上げた。


アレッタ・・・  嫌ーーーーーっ!


なんとアレッタの目は、大蛇のように変化し赤く光っている。


可愛らしかった口元も大きく裂け、鋭く尖った長い牙が何本も並んでいる。


これは・・  もしかしてヴイーヴル・・   お前、生きていたのか!


ガッ


ギャーーー!!


次の瞬間、ディアの頭は胴体と離れ、なんとアレッタに飲み込まれてしまった。


ほんの数秒の間、頭を失ったディアの胴体が、土の上でビクビクと跳ね動いた。





***


ちょっと!  このままじゃアリシアが危ないわ!  あたし助けに行って来る!


セレネさん。  今からじゃ間に合いませんよ。



だって!  こんな状況でじっとなんかしてらんないわよ!


まあ、僕が止めても行くんでしょうけど・・・


そうよ! 止めても無駄だからね。


はいはい。 


それじゃ、ちょっと行ってくりゅーー。


えっ?  もしかしてダクネスのまね?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る