第498話 ◆アリシアの大冒険(その9) 旅立ち

◆アリシアの大冒険(その9) 旅立ち


ディアの家に一晩泊めてもらい、翌朝からディアが旅に出る支度をするのを手伝った。


ちなみに旅慣れたあたしは、リュックの中に着替えと洗面用具を入れているくらいだ。


初めて旅に出るというディアは、なんだか家ごと持っていくのではないかと思うぐらい大きな荷物を幾つも作った。



う~ん。 まだ何んだか忘れてる物がある気がするなあ・・・


ディア、ディア。 ねえ、ディアったら。


なんだ? 


そんなにたくさんの荷物をいったいどうやって持って行くつもりなの?


そうだね・・ どうしようかアリシア?


ディアが、あたしをじっと見つめながら首を傾げる。


あ、あたしはディアの荷物なんか持ってあげないわよ!  これだけは最初から言っておくからね。


そうか・・・


なんで、そんなに残念そうな顔をするのよ!


すまない。


もう・・仕方がないわね!   それじゃあ、あたしが言う物だけ用意して持ってきて。


わかった。


まずは、動きやすくて丈夫な服と下着を2セットね。


それと洗面道具一式。


ああ、OK。  いま持ってくるよ。


ディアはさっき詰めた荷物の中から、言われたものを選んでいる。


やれやれ、これじゃ出発できるのは午後かしら。



アリシア、これも持っていきたいんだが。


ディアが白くて長い布を持って来る。


なにこれ? 顔用タオルのお徳用品?


いや、これは晒

さらし

だよ。


これって必要なの?


ああ、これがないと乳が揺れて落ち着かないし、狩りもできないじゃないか。


(ちっ  どうしてあたしの周りにはデカ乳女が多いのかしら!  まったく嫌になるわね)


ねえ、ディアーナはどうしてブラを付けないの?  その方が面倒くさくないでしょ。


なんだ。 そのブラって?


知らないの?


ああ、そんなものはこの村じゃ見たことないしな。


わかったわ。  どこかの町でディアに合うブラを探しましょ。


あ、うん・・


ディアは、ブラのイメージが湧かないらしい。


かと言ってあたしのは見せたくはない。



***


結局、ディアの荷造りを終えて出発出来たのは、予想どおり午後になってしまった。


まずは、来た道を引き返して東の端の漁村を目指す。


ここまでは、ほぼ一本道なのでしょうがない。


でも、来る時と違って下り坂が多くなるので、ずいぶん楽だ。


ディアと一緒に歩いていると二人連れで歩くことが、如何に安心できるかがよく分かる。


話し相手がいるので退屈しないし、右側を歩いていれば右側に注意しながら進めばよくなり、警戒範囲も半分だ。



そして、漁村の近くまで来たとき、ある事件が起きてしまったのだった。




***


ねえねえ、ディアってティアと名前が似てなくない?


ディアはディアーナの頭を取ってディアですよ。


ティアは、涙(tear)です。 あの娘を泣かすと宝石の涙が出るんです。


ほんとうに?


嘘ですよ(笑) セレネさんは、すぐに信じるんだな。  ワハハ


クソッ 覚えとけよ!


ヒィッ

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る