第499話 ◆アリシアの大冒険(その10)  早速波瀾万丈?

◆アリシアの大冒険(その10)  早速波瀾万丈?



もうすぐ一昨日上陸した漁村に着くというところで、前方から数人の男の人達が走ってくるのが見えた。


おい、いたぞ!


逃がすなよ!


早く捕まえるんだ!


男の人達は口々に大声を出しながら、もの凄い勢いで向かって来る。


え? なに? ひょっとしてあたし?


気が動転している間に、あたしは男の人達に囲まれてしまった。



おい、ディア。 こっちに来い!  そいつは悪人だぞ!


人の事を悪人って、あんた達いったい何を言ってるの?


そばにいるディアも首を傾げているが、少し暢気(のんき)すぎると思う。



いいから早く息子を返せ!  さもなければ、力ずくでも返してもらうぞ。


男達の一人が大声を出す。  男たちは漁師なのだろう、みんな凄い筋肉だ。


息子さんって?


俺の息子だ。 昨日の夕方から家に帰ってない!


なっ!  あたしは知らないわよ。


いいや。 一昨日、お前がこの村に来たことは分かっているんだ。


お前が息子を連れ去ったに違いない!


そんな・・  あたしは、ディアに会いに行っただけだし、ずっとディアと一緒にいたわ。


嘘をつくな!  それじゃあ、俺の息子はどこにいったって言うんだ。


そんなのあたしが知ってるわけがないじゃないの!


ええい、まだ白を切るのか!  この村に来たよそ者はお前しかいないんだ。


やだ、なにそれ怖い。 ここの人達ってそれだけの理由であたしの事を疑っているの?


当たり前だ。 それじゃあ、誰が俺の息子をさらったんだ。


だから知らないって言ってるでしょ!


仕方がない。 ちょっと俺たちと一緒に来てもらおうか!



ちょっ・・  


あたしは、咄嗟に身構えたが、ママと約束した十戒のことを思い出した。



(1)ママの言うことを守ること

(2)むやみに魔法は使わないこと

(3)知らない人とは口をきかないこと

(4)日記をつけること

(5)人には親切にすること

(6)人を傷つけないこと

(7)人の悪口はいわないこと

(8)嘘は絶対につかないこと

(9)食事ができたときは感謝すること

(10)自分で考えて行動すること  



これは(6)と(2)に当てはまるわね。 


相手は魔物じゃないし、ここはおとなしく様子を見ることにしようかしら。



さあ、こっちに来るんだ!


あたしが、ひとりでブツブツ言ってる間に、男達に両手をつかまれてしまった。


両脇を屈強な漁師にかためられ、引きずられるように漁港の方へ向かう。


ディアはというと、この娘は鈍いというか刺激の無い世界で生きてきたからか、動揺するわけでもなく黙ってあたしたちの後をついて来ている。


あたしは結局、港の近くにある漁に使う網などの道具をしまっておく小さな小屋に連れて来られた。


そこには、すでに村人全員が集まっていた。



あたしの大切な息子を返してください。  子どもの母親らしき女性があたしの肩を揺すりながら訴えてくる。


さっきから言ってるけど、あたし本当に知らないんです。  なんで信じてくれないんですか?



この村では何十年もの間、事件も事故もなく平和な毎日だったんだ。


あんたがこの村に来た途端、急に子どもがいなくなったんだぞ!  あんたがさらったとしか思えないだろーが。


だーかーらー  それは偶然じゃないの!  あたしは本当にし・ら・な・い・わ!!


ほら、ディアもなんとか言ってよ。  このままじゃ、旅に出られないわよ。  


あっ・・  たしかにアリシアは、わたしと一緒に家にいたし、これから二人で旅に出るところだったんだ。


ディア、それは本当のことなのか?


そうだ。 わたしは嘘は絶対に言わない。



ディアが言うならそうかも知れないが、それじゃあ俺たちの子どもはいったいどこにいっちまったんだ!


それを聞いた母親が泣き崩れる。



わかった。 わたしに任せろ。 ロキはわたしたちが必ず見つけて来てやる。


はっ?  あたしたちって何よ。


アリシアもわたしと一緒に探しに行くってことだ。


でも、どこを探すっていうの?


ロキは、まだ5歳だ。  そんなに遠くには行っていないさ。


はぁ~ わかったわ。  変に疑われたままだと嫌だし、仕方がないわね。 



こうして、ディアとアリシアの旅は、初日から波瀾万丈で幕を開けたのであった。





***


セレネさん。 ちょっと聞いてくださいよ。


なに?


単行本一冊って、何文字ぐらいだと思います?


う~ん  わかんないわ。


一冊だいたい10万文字くらいだそうです。


だからなに?


この小説って、今時点で何文字あるか知ってますか?


だから~ わかんないわよ。  そんなの!



498話までで、698,657文字です。  つまり単行本だと7冊分ですよ!


へぇー あんたにしたら、よく続いたわねー。  (鼻ほじ)


ちぇっ なんかそろそろ止めようかな・・ 500話になったし。


あ゛ぇ?


なんですか変な声だして?


や・・やめないで・・


声が小さくて聞こえませんけど。


だから、やめないでよ!


ふふん。 よろしい。


きぃーーー  くやしいーーー!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る