第483話 ◆再び突入!

◆再び突入!


さてと・・ セレネちゃん。 覚悟はちゃんと出来ているかしら?  ヴォルルさんが振り返りながらウィンクして来る。


もちろんです。


よいわ~  それじゃあ、突っ込むわよ!


はいっ!


あたしとヴォルルさんは、大神殿目指してグングン高度を下げながら更に加速して行く。


前方には、早くも9人のヴァルキューレが横一文字に並び、立ち塞がっているのが見える。


9人のヴァルキューレ以外、空中にそのほかの敵の姿は見えない。


前回の戦いでは、軍神や多くの天使たちもセレネたちによって、手痛いほどに負かされていた。


なので、雑魚は戦うだけ無駄だということなのだろう。



正直、ヴァルキューレは相当強いと覚悟しておかなければならない。


セレネちゃん、あの9人は左から、ヒルド、ゴンドゥル、フロック、ミスト、スコグル、フルンド、エイル、フリスト、スクルドっていうのよ。


みんな結構強いから気を付けてね~。


はいっ!



えーと  スクルドさんは話したことがあるけど他の人はよく分からないや。


左の7人は、あたしが片付けるから右側の二人はセレネちゃんに任せたわよ~♪


了解です。


とは言ったもののスクルドさんって、確かめちゃ強くなかったっけ?


話しは分かる人だけど、けいちゃんを誘拐されるのは2度目だし、もう手加減はしないよ!



バァアーーン  ドガッ  ガスッ  


既に10時の方向では、ヴォルルさんと7人のヴァルキューレが凄まじい戦闘を繰り広げ始めた。



それじゃ、こっちも派手に行きますか!


あたしはココに来る途中で使った瞬間移動で、フリストの真後ろにジャンプ!  その不意を突いて後ろからドロップキックをくらわす。


ちょっと卑怯だけど、相手だってあたしに二人がかりだもんね。



でもフリストは海面ぎりぎりで、Vターンしてあたしの目の前を上昇し急反転。 今度はあたしの真上から光球弾を乱射して来る。


これに当たったら無傷ではすまないので、わざとスクルドのいる方へ逃げる。


スクルドもあたしの作戦を即見抜き、巻き込まれないように右方向へ回避し始める。



ふふん  スピードはあたしの方が上よっ!


あっという間にスクルドの背後から追い抜き、しつこく追いかけてくる光球弾を全部スクルドに押し付けた。


パッ パッ パッ


後方で光球弾がスクルドに命中し、閃光が走る。


ドォーーン


そして数秒遅れて爆発音と爆風が飛んで来る。


やったか!


スピードを落として後ろを振り返れば、スクルドが黒焦げになりながら海面へ落下していくではないか。


あたしは助けるべきか一瞬迷ったが、フリストがスクルドを追っていったのが見えたので、ヴォルルさんのところへ戻ることにした。



あたしが元の空域まで戻ると、ヴォルルさんは既に6人のヴァルキューレを倒し、最後の一人であるヒルドと激しい空中戦の真っ最中だった。


一見互角に見えるが、あたしの目は誤魔化せない。


ありゃー  あれはどうみても猫がネズミで遊んでる図だなーー


こっちはもう大丈夫そうだから先を急ごう。  あたしは一刻も早く、けいちゃんを助け出したいのだ。




***


こちらは大神殿がある丘の上。


長老(大神)とその取り巻きの神々が丘の上に立っていた。


大神殿から西へおよそ2kmの上空では、ヴォルルがヒルドと空中戦の真っ最中である。



満月の日を迎える前にあのセレエルとヴォルルがやってくるとは・・・


しかも我が方は劣勢どころか、あと少しで全滅しそうですぞ。


仕方がない。 もうあれを使うしかないかのぉ。


まってください。 そんなことをしたら、この天界もただではすみませぬぞ。  周りにいる神々もざわつく。


ならば、お主に何か妙案はあるのかな?


いや・・それは・・


ならば仕方がないじゃろう。


急いでユグドラシスの枝から作った柄つかを持つ、あの槍をここに持って来なさい。


でも、あれは運命の女神ノルン様のものです。


かまわんよ。  もはやあの槍を使わなければ、天界は滅んでしまうのだ。



***


そうこうしているうちに、最後のヴァルキューレ、ヒルドもヴォルルさんによって海に叩き落された。


ヴォルルさんは、戦った相手には致命傷は負わせていない。 しかも自分は無傷のままである。



あたしは、ヴォルルさんよりほんの少しだけ早く大神殿の上空に達した。


アリエルはどこ?


あたしは大神殿の上空を旋回しながらアリエルを必死に探した。


大神殿の前には長老と呼ばれる神々が、上空のあたしを指さして何かを言っている。


やがて、その中の一人の神が長い槍を持って来て、真ん中に立っている大神に手渡した。


セレネちゃん気を付けて!  あれはユグドラシスの槍よ!  


あたしに追いついて来たヴォルルさんが後ろから声をかけてくる。



ヴォルルさん、あたしにもあのユグドラシスの槍っていうのが、相当にヤバイものだっていうのは何となく分かるよ!


いい、セレネちゃん。 ユグドラシスの槍っていうのはね、運命の女神ノルンが持つこの世界の最強の武器なのよ。


ええっ!  世界最強なんですか?


そうよ。 このあたしも敵わないわ。  なぜなら、運命を自由にコントロールできる槍だからよ。


そんな・・・  でも、槍に当たらなければ平気じゃないですか。


いいえ。 槍を使う者が、あたしとセレネちゃんを串刺しにして殺すと念を込めて突き出せば、そのとおりになる恐ろしい武器よ。


それじゃ、アリエルが助けられないじゃないですか?


いいえ、一つだけ方法があるわ。


ほんとうですか?


ええ。  あたしがユグドラシスの槍に突かれた時に、槍を道連れに自爆すればいいのよ。


そんなことしたら、ヴォルルさんが死んじゃうじゃないですか!  そんなのダメです!


でも他に方法はないわよ。


それなら、あたしが槍を道連れに自爆します。 だからヴォルルさんがアリエルを助け出してください。


セレネちゃんって、ほんとうにイイヤツね。  でも、ここはあたしが行くわ!


あっ、ヴォルルさん!  待って!



ヴォルルさんは、あたしの言葉も届かないスピードで大神殿に向かって飛んで行ってしまった。


ど・・どうしよう・・



あたしは、その場から動けず、ただ大神殿の方を見つめているしかなかった。




***


ねえ、何? この使いまわしみたいなの?


やだなあ、セレネさん。  知らないんですか?


なにが?


ほら、Re:ゼロから始める異〇界〇活とかですよ。


それがなに?


えーーーっ!

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