第482話 ◆黄泉がえり

◆黄泉がえり


クロノスが廃墟となっていた大神殿周辺の時間を、セレネとヴォルルがヴァルキューレと戦闘になる前日まで巻き戻した。


この時間の巻き戻しにより、大神殿も長老たちも元通り蘇った。


むろんアリエルも何事もなかったかのように存在している。


そしてサリエルも、天界に向かっている途中まで巻き戻されていた。



ここでクロノスが何の干渉もしなければ、ビデオを巻き戻してから再生するのと同じで、また悲劇が繰り返されるだけである。


クロノスはいろいろ悩んだすえ、夜が更けるのを待ってアリエルがとらわれ監視されている部屋に、裏手の窓から忍び込んだ。


部屋は暗いのだが月明かりで何とかアリエルのベッド近づき、すやすやと眠っているその肩をそっとゆすった。


う~ん


アリエルの瞼がゆっくり開きかけるが、目の前のクロノスに気づきハッと目を見開き、口を大きく開けた。


クロノスは慌ててアリエルの口を掌(てのひら)で塞ぎ、アリエルが大きな声をあげれないようにする。



しっ! 僕だ。 クロノスだ。   驚かせてごめん。


う゛ーー


いま手を放すから、大きな声を出さないで!  わかったね?


アリエルがうなずくのを確認し、クロノスはゆっくりと手を離した。


アリエルがベッドの上で上体を起こしたのを見て、クロノスは自分が着ている白い上着をアリエルの肩からかけてあげた。



アリエルが少し落ち着くまで待って、クロノスはこれから天界で起こることと、それを回避するためにこれから二人でこの地を離れることを分かりやすく説明した。


最初は信じられない様子だったアリエルもこれから起きるであろう事実を知り、またクロノスの手によって前日まで時間を巻き戻した今にしかそれが回避できないことを悟った。



それじゃ、長老たちに見つからないように急いで出かけるしたくをして来てくれるかな。 


はい。


アリエルは黙ってうなずくと支度をするために隣の部屋に入っていった。




アリエルの部屋の扉の向こうには、見張りがいるはずなのだ。


もしも見つかって長老たちに逃げ出した事が伝われば、クロノスひとりの力ではアリエルを守ることはできない。



僅かな時間でアリエルは動きやすい服装に着替え、皮で出来た軽い靴を履いてクロノスの前に戻って来た。


さぁ、夜が明けないうちに出来るだけ遠くまで行かなければ、またヴァルキューレたちの戦いに巻き込まれてしまうよ。


アリエルは、クロノスの目を見つめ静かにうなずく。



クロノスは意を決してアリエルを強く抱きかかえ、窓から飛び降りた。


5階ほどの高さがあるものの、クロノスは神通力を使ってふわりと地面に着地する。



アリエルは、クロノスに抱かれて顔を赤くする。  体も熱く火照る。  この感情や体の変化も初めての体験だった。


もう少しの間、クロノスに抱きしめていて欲しかったが、今はそんなことを言っている場合ではない。



二人は手をつなぎ、神殿裏手の黒い森に向かって駆け出した。




***


ねえ、娘のアリエルがイケメンのクロノスと駆け落ちみたいになってるのは、どうしてなの?


えーーと どうしてって言われても・・・


だから、何であたしはシルフとかサリエルとかヴォルルさんやブラックとか♀ばかりなのって訊いてるのよ!


あたしもアリエルみたいなイケメンがいい!



う~ん  つけ麵じゃダメですか?


そうね。 煮卵とチャーシュー2枚追加、あと替え玉ありなら、それで手を打ってもいいわよ。


それでいいんだ・・・

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