第452話 ◆セレネ事故現場へ向かう

◆セレネ事故現場へ向かう


次の日の朝。


あたしは、昨日エルサが帰って来たのが真夜中だったため、夕食とぼたもちを二人前食べて見事に太ったことに対して文句を言ってやろうとお城の中を探し回っていた。


そうしたら、たまたま通った鳩小屋に普段見慣れない鳩がいるのを見つけた。


その鳩の足には手紙を入れる筒が付けられていた。  そおっと鳩を捕まえて、足に付けられている筒の中から手紙を抜き取ってみて、あたしは驚いた。


それにはヴァカンスに行っていたみんなが最北端の峠道で事故に遭い、全員行方不明になっていると書かれているではないか。


手紙の差出人は、国境警備隊の指令官であり、みんなが事故に遭ったのは間違いなさそうだ。


あたしは、直ぐにでも飛んでみんなを探しに行きたかったのだけれど、あの最強のメンバーを思い出し一旦冷静になろうと考えた。


ヴォルルさん、ニーナ、メイア、コリン君、アリシア、シルフ・・ これだけでも一国を滅ぼせるくらいの力がある。


事故に遭ったといえども、そう易々と怪我などはしないだろう。


まずは、エルサを探し出しこの状況を説明して、国政に支障が無いようにしてからみんなを探しに行こう。


・・・



昨日、あたしが呑気にぼたもちなどを食べていた時、みんなが大変な目に遭っていた。


いま、エルサをやっと見つけて、今後の対応について話をしている。



・・・という連絡が国境警備隊から届いたので、これから現地まで出かけてきます。


何日か留守にすることになると思うので、ずうずうしくて申し訳ないのだけれど、その間エルサさん達に引き続き仕事をお願いしたいのです。


わかりました。 留守の間とは言わずいつまでもお手伝いさせていただきますよ。


そう言ってエルサは下を向いた時、ニヤリとほくそ笑んだ。


あたしはその時気付かずに「ありがとう」と感謝の言葉を述べていた。



・・・



そして、あたしは特別にチャーターした飛行船に乗って最北端の岬を目指した。


この飛行船は改良型で時速は500km/h近くでる。


なので、岬までは10時間ほどで着くことができた。


それでももうすぐ、あたりは暗くなってくる時間になっている。


あたしは、国境警備隊に事故の内容を詳しく聴くために、急いで事務所に向かった。



女王様、事故の内容は事前にまとめておきましたので、この書類を見てください。


対応してくれた隊長は、とても優秀そうな若者だった。


事故が起きた場所と現場の様子をスケッチした紙を見ながら説明を受ける。



事故現場には洞窟があって崖が崩れた時に、そこに避難したのではないかと推測している。


だが、その洞窟は崩れた岩ですっかり埋まってしまい、とても人の力では助け出せる状況にない。


土砂なら時間をかけて掘ることができるが、大きな岩石が幾つも重なっていて、現地にある道具では全く歯が立たない。


洞窟があった場所で、助けを求める声が聞こえないか調べたが、全く聞こえなかった。


国境警備隊長は、以上のような説明を完結にしてくれた。


あたしはお礼を言うと飛行魔法を使って、真っ直ぐに事故現場へと向かった。



ヴォルルさんが居れば、崩れてきた巨岩であっても簡単にどかすことが出来るはずだ。


ニーナだって瞬間移動を使えば、あっと言う間にお城に戻って来ることが出来る。


これはやっぱりどこかがおかしい。



あたしは、だんだん不安になっていったのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る