第453話 ◆全員救出
◆全員救出
事故現場が近づいて来るにつれて、大きく崩れた岩肌が見えてきた。
あたしは大きく崩落した場所を避けて、少し離れた場所に降り立った。
まずは思っていた以上に悲惨な状況に、どうすればいいのか考える。
これはあたしの魔力で岩をどかして行っても、随分時間がかかってしまうだろう。
でも、あたしがやるっきゃないよね。
近くにあった大岩に手をかけ、念を籠めながら持ち上げる。
あれっ? 結構軽々持ち上がるじゃん。 (この時点で、セレネは自分の魔力が10倍アップしていることを知らない)
あたしは、落石に注意しながら辺りの大岩をどけ始めた。
すると何かがすごい勢いで胸元に飛び込んで来て張り付いた。
びっくりして胸元をみれば、ピィー ピィー 泣きじゃくっている。
あっ、シルフとブラックじゃないの! みんなはどこ?
二人が落ち着くまで待って何とか聞き出した内容に、あたしは言葉を失った。
まさか、本当なの?
なんでも、みんなが峠道を歩いていたら、上から魔力が籠められたネットが落ちて来て、全員捕まってしまったそうなのだ。
その上、国境警備隊の隊員たちに近くにあった洞窟に閉じ込められた上に、入口まで塞がれてしまったという。
それ以上に驚いたのは、どうやら首謀者はエルサだと言うことだ。
どうやらエルサが大金を払って、国境警備隊を犯行仲間に引き入れたらしい。
みんなは、魔力封じのネットがあるため手も足もだせないらしく、早く出してあげて欲しいとシルフたちに急かされる。
確かに洞窟は大きなものではない。 時間が経てば中の酸素が無くなって窒息してしまうだろう。
あたしは、イチかバチか崩れた斜面の真横から、爆裂魔法を放って積みあがった岩と土砂を一気に吹き飛ばす作戦に出た。
ただしこれが上手く行かなければ、さらに山が崩れ本当に救出不可能になってしまう。
だけどみんなが閉じ込められてから24時間以上経っているし、時間的にもう余裕がない。
もう、やるっきゃないのだ!
爆裂魔法は、詠唱無しでも放つことができるが、詠唱した方が威力が何倍にもなる。
あたしは、落ち着いて詠唱をし始める。 真っ直ぐに伸ばした両手の中に光り輝く光球が出来始め、徐々に大きくなっていく。
なおも、詠唱を続けると光球からバチバチという音と紅炎が現れる。
よしっ! いっけーーーっ! エクスプローション!
ドォォーーーーン
大爆発により一瞬辺りが真っ白になる。
ゴォォーーーー
続けてもの凄い爆風が吹き、辺りの岩や土砂が吹き飛ばされて行った。
爆風が治まるとぽっかりと洞窟が現れた。
やった、大成功だ!
すぐさま、洞窟に駆け寄るとネットの中のみんなが、あたしをじっと見ていた。
まるで、漁網にかかった鰯の群れのようになっているのを見てちょっと笑ってしまった。
セレネ、笑ってないで早く助けなさいよ!
やっぱり第一声はアリシアだ。 まあ、元気そうでよかった。
ネットには確かに強力な魔力封じがかけられている。 さすが大魔導士エルサだ。
あたしは、ネットの一部を焼いて人が通れるように穴を開けてあげた。
みんなは、一人ずつ穴をくぐって這い出て来た。
セレネ聞いて! コリンったらイヤラシイのよ!
どうしたの?
あの網の中であたしにあり得ない物をずっと押し付けて来たの。
いや、だから誤解ですって。 あの状況じゃ体なんて動かせないじゃないですか。
それに、ずっとあたしの耳元で、はぁはぁ言っててキモイったらありゃしないわ。
ぼ、僕に呼吸するなって言うんですか!
そうよ、コリンだけ死ねばよかったんじゃないの!
むちゃくちゃ言うなよ!
まあ、まあ二人とも落ち着いて。 それより、怪我した人とかいないよね?
大丈夫です。
それにしても、国境警備隊の隊員まで仲間にして、こんな酷いことをするなんて許せない!
あたしは、エルサに今まで無かったほどの怒りを覚えていた。
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